またルーマニアやジョージアでは、選挙の結果をめぐって国内対立が激化している。後進諸国の選挙を無効だと叫ぶことで、民衆に“正しい”政権を打ち立てるというのが、アメリカが好む1つの「神話」だ。それならば、21世紀に脚色されたカラー革命などはそうした神話の1つであった。
カラー革命は、ユーゴ内戦の崩壊でアメリカの手に落ちたセルビアから始まったともいわれる。その後、アラブの春、オレンジ革命などの名称が使われ、民衆による独裁者からの革命を声高に叫び始めたのは、この20年のことだ。
民衆革命がもたらした混乱という現実
ウクライナ戦争は、まさにこうした「民衆革命」という神話から生まれたものだが、ポロシェンコからゼレンスキーという「民衆の大統領」がその後にウクライナにもたらしたものは、今起きているウクライナの混乱であったともいえる。
民衆は、民主主義というイデオロギーに関心は抱かないだろうが、これによって翻弄され殺戮されることはありうるのだということだけは、忘れてはならない。
あの「アラブの春」で倒されたカダフィ(1942~2011年)による独裁政権後のリビアは、今どうなっているのだろうか。実はいまだに混乱の最中にあることは、正しく伝えられていない。ルーマニアやジョージアも、そしてコソボもこれと同じ道をたどることになるのだろうか。
ここで挙げたいずれの国も、シリアを含めて19世紀に崩壊していったオスマントルコの支配地域だったことは、偶然ではない。
要するに、西欧の作り出した国民国家と民主主義という神話の中で、つねに翻弄され苦しみ悶えているのである。そして今ではその宗主国である西欧でさえも、自らの民主主義の機能不全に陥っているといえる。
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