味では、競合するチェーンの洋風な味わいと差別化するために中華や和風を検討したといいます。最終的には、モスバーガーらしさを重視して、酒やしょうゆ、塩をベースにした和風の味わいに決定し、昆布やかつおだしでアクセントもつけた、現在の味わいに落ち着きました。
寺本さんが「最もポイント」と話す衣は、もともとメニューとしてあったナゲットだけでなく天ぷらや魚フライ、竜田揚げなどさまざまなものの作り方を試したそうです。検討するうえで軸となったのは、意外な食べ物でした。
「焼きたてでも、冷めてもおいしい。そして、食感が残っているものとして、せんべいをイメージしながら試行錯誤を繰り返しました」
何十、何百と試作を重ねてたどり着いたのが、現在使っている米粉です。せんべいのような食感や、冷めてもおいしく食べられることが決め手だったといい、衣の食感を楽しんでもらうため、厚みは均一にせず天ぷらのような仕上がりにしたのもポイントだとか。
ちなみに衣自体に味はつけておらず、工場や店舗で調理する過程で肉の下味が良い塩梅に衣へと移り、独自の風味が生まれているそうです。
不変の味で、クリスマスの新定番に
1年以上の開発期間を経て、1992年に発売したモスチキン。その人気はすさまじく、在庫がわずか3日でなくなり、本社から工場に人員を送り、夜通しで製造工程の応援を行ったといいます。
「正直なところ、発売前の社内や店長会議などの反響は『確かに食べたらおいしいけど、サイドメニューだしね』といった形で、そこまで大きくありませんでした。それが、フタを開ければ想定以上の反響で驚きましたね」
その後はモスバーガーの脇をしっかり固めるメニューとして、30年以上愛され続けているのは周知の通り。「モスチキンに続け」と、これまでいくつもモスバーガーはフライドチキンメニューを開発してきましたが、ことごとくモスチキンが「王座防衛」し、強さを見せています。
驚くのは、30年以上前の登場時から味にはほとんど手を加えていないこと。オペレーション面の改善などは行っているものの、味は大きく変化していません。
モスバーガーのミートソースは13回、テリヤキソースは7回も味をリニューアルしたといい、比較するとそのすごさがわかります。
ちなみに直近では2023年に、モスチキンを袋に入れる向きを反対にしました。以前は持ち手が上になっていたところ、上下を逆にしたことで、ミシン目を破ってから食べやすいように改良しています。
30年以上を経て、クリスマスの定番としても少しずつ立ち位置を固めているモスチキン。ここ10年で1日当たりの最大販売個数は300万個以上だとか。とはいえ寺本さんは「クリスマス時期はよく売れる一方、モスバーガーやテリヤキバーガーと比較して認知度はまだまだ低いのが現状です」と話します。
近年では、夏季限定として「ホット スパイスモスチキン」を発売するなど、さらなる人気の向上に努めているそうで、今後の飛躍にも目が離せません。
記事をマイページに保存
できます。
無料会員登録はこちら
ログインはこちら
印刷ページの表示はログインが必要です。
無料会員登録はこちら
ログインはこちら
無料会員登録はこちら
ログインはこちら