インド、巨大な手つかず市場「低所得者層」を狙え ヤマ発、テラモーターズが挑む2輪・3輪の新事業

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ベンガルール市内で配送するZomatoのドライバー。ランチタイムには至る所で見かける(筆者撮影)

こうした社会課題の解決に、ビジネスチャンスを見出す日本企業がある。2輪大手のヤマハ発動機だ。2021年に設立した現地子会社モト・ビジネス・サービス・インディア(MBSI)が、インドで2輪のリース事業を展開。仕事道具としてバイクを貸し出すことでインドの低所得者層に現金収入を得る機会を提供している。

バハドゥールさんが毎日12時間乗るバイクは、今年6月から「Fae Bikes(フェーバイク)」という現地の事業者からレンタルし整備も任せているため、配送業に集中できる。このフェーバイクが保有する1400台の2輪EV(電動バイク)のうち200台はMBSIによりリースされたものだ。

「モビリティへのアクセスに障害がある低所得者層の就業ハードルを下げることで、貧困に苦しむ人たちを救いたい」。MBSIの中尾浩社長はそう力を込める。

最大のライバル、ホンダの2輪も貸し出す

MBSIは現在、インドの12の州と地域で事業を展開しており、物流やタクシー事業者など31の法人へ2輪、3輪、4輪をリースしている。

当初は、最終利用者に直接貸し出す事業を考えたものの、低所得者層を対象とするため信用リスクが高く、現地の法人パートナーを通じてリースするビジネスモデルに転換した。現在の車両保有台数は合計で約1万台、これを3年後の2027年末に約5万台に急拡大させる計画だ。

MBSIは、ヤマハ発動機にとって異端な新規事業とも言える。実は、MBSIが保有する2輪車両のうちヤマハ発動機製はごくわずかで、9割以上が他社製だという。「ホンダさんのバイクを欲しいと顧客が言えば、ヤマハのお金でホンダさんのバイクを買って使ってもらっている」(中尾氏)。

海外子会社の社名には通常ヤマハの「Y」の字を入れるが、MBSIだけは例外とした。MBSIが狙うのは新興国での社会課題解決だが、そのためには規模の拡大が不可欠。2輪メーカーとしての車両の縛りをあえてなくすことで、成長速度を優先した。

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