「育児ストレスも影響していたかもしれません」と、かおりさん。イライラを何とかしようと、お風呂にゆっくり入ったり、アロマテラピーをしてみたり……。だが、いっこうに改善する気配はない。
このままでは自分も家族もつらい。家庭が崩壊してしまうかもしれない。何より子どもから「急に怒り始める怖いお母さん」として見られるのは、ぜったいに避けたい。
そうだ、家族会議を開こう!
考えた末、かおりさんは“ある対策”を講じることにした。
家族会議を開き、そこで「お母さんには月経前症候群という生理にともなって体調が変わる病気がある。イライラはその病気によるもの」と説明したのだ。
子どもたちは話を聞いても驚くことはなく、「じゃあ(イライラは)しかたがないね」という反応だったという。かおりさんは、実はこれまでも性教育の一環として、体や性について子どもたちに、積極的に教えていた。これが功を奏したのだろう。
これ以後、かおりさんは生理前になると子どもたちにはっきり、「イライラしてきました。明日、生理が来ます。だから今日のお母さんは怒りっぽいです!!」などと伝えることにした。
やがて、子どもたちのほうから、様子を察して「お母さん、大丈夫?」と聞いてきてくれたり、「触らぬ神に祟りなし」という感じで、放っておいてくれたりするようになった。
もともと育児や家事に協力的だった夫も、「今日はお母さん、生理で体調悪い日だから、お父さんと一緒に外に出かけよう」「今日はお父さんと一緒にご飯作ろう。何がいい? まずは、買い物に行こうか」などと気を遣ってくれるように。
おかげで、かおりさんが1人で休めるようになったという。
母親のイライラ問題から勃発した親子問題。これをなんとか乗り越えた、浜田さん一家。それ以後、より何でも話せる家族へと進化した。
かおりさんは言う。
「夫の協力のことを友人たちに話すたびに、『旦那さんはすごい、いい人だね』とよく言われます。もちろん夫にはとても感謝しています。ただ、こうした対応がすべての男性のスタンダードになればいいなぁ、と願わずにはいられません」
総合診療かかりつけ医、きくち総合診療クリニック院長の菊池大和医師によれば、月経前症候群の症状は実に多彩だ。
心の症状としては情緒不安定、イライラや抑うつ、不安や眠気、集中力の低下、睡眠障害など。体の症状では腹痛や頭痛、むくみ、お腹の張り、乳房の張りなどが起こってくる。