「親の介護施設入居」を難航させる3つのハードル 本音は「施設の種類が多すぎてよくわからない」
太田 そう割り切れるのが月野ママのすごいところです。そして2つ目のハードルは、きょうだいや親戚です。「まだ大丈夫じゃない?」と実情を知らないきょうだいが反対したり、「施設に入れるなんて親不孝だ」と親戚が反対してきたりします。
月野 わが家の場合、わりとみんな同じ気持ちでした。これもラッキーだったんですね。
太田 3つ目は「お金」です。1カ月30万円以上払える経済的な余裕があるご高齢の方は多くありません。
月野 それは母に感謝です。母は貯蓄することが趣味みたいな人で、安心できるだけの預貯金がありました。とはいえ全額自費で高級ホームにずっと入り続けるほどの余裕はなかったので、1カ月だけしか入居できませんでしたが……。
太田 今回のように、地域包括支援センターが保険外のショートステイを紹介することはあまり多くありません。しかも、かなり高額。通常は、あと2~3週間待てば認定がおりることが見込まれていたので、それを待って、介護保険を使ってのショートステイを紹介すると思います。
月野 そうなんですね。きっと私がせっぱ詰まっていて、「高くてもいいので、すぐに1カ月預かってくれるところを!」と頼み込んだから介護付有料老人ホームを紹介してくれたのかもしれません。
太田 そうかもしれないですね。でも、いまこの本を読んでくださっているみなさん、「35万円払わないとショートステイを利用できない」と勘違いしないでくださいね。
施設探しが難航するのは種類が多いから
月野 うちのケースは例外という感じなんですね。では、ほかの選択肢として、どんな可能性があったんでしょう。
太田 先ほどお話しした地域包括ケア病棟に入院することもできる可能性はありますし、介護保険がおりれば老健(介護老人保健施設)などの介護保険施設に入居したり、介護保険を使ってショートステイを利用したりする方法も考えられます。
月野 そもそも施設の種類が全然わかっていなかったんです。母がショートステイで入ったところも、いま入っている施設も「介護付有料老人ホーム」という分類だっていうことをつい最近まで知らなかったくらいです。
太田 複雑なのでわからないのは当然です。介護が始まるまでは知らないのが普通です。施設を探そうとする人が最初につまずくのはその種類の多さなんです。大きく分けると、有料老人ホームは介護付と住宅型の2種類になります。
月野 介護付は24時間365日体制で、介護を受けられるんですよね。母の場合、それが大前提でした。
太田 一方の住宅型は、前提としてある程度自立した生活が送れる人向けの施設です。介護が必要になったら別途介護サービスの事業者と契約することになります。でも、介護の必要度合いが進むと、暮らし続けることが難しくなる施設もあるので注意が必要です。
月野 あと、公的施設と民間施設があるっていうことも知りませんでした。有料老人ホームって民間施設なんですね。