タワマン高騰の果て「不動産大暴落」が訪れる条件 需給バランス崩壊で価格は本当に下がるのか

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これと同じようなことが不動産会社でも起こる。仕入れた土地は下げて売るくらいなら売らないという選択になる。体力のない会社はほぼすべてリーマンショック後に倒産しており、残った会社は低金利での借り入れで財務体力は十分にある会社が多い。下げて売るくらいなら、販売期間が長引いてもいいと判断する会社は多い。つまり、不動産価格が大暴落するときは、持ち家所有の個人が破産し、デベロッパーが倒産するしかないのだ。

返済できなくなる前に金融機関に相談すればいい

下がらない理由をもう1つダメ押ししておこう。金融庁のホームページに「貸付条件の変更等の状況について」という資料がある。これは、中小企業がローンの返済に困った場合に、現在返済中の借入金の返済方法を、借入者の状況に合わせて一時的に緩やかなものに変更することだ。支払いのリスケ、軽減、減免などを指す。コロナ以降、175万件あまりの申し込みに98.8%が応じている。

つまり、返済できなくなる前に金融機関に相談すれば、ほぼすべて応じてもらえるのだ。同様に、住宅ローンも約10万件の申し込みに96.3%が応じている。これは、1998年の金融ビッグバンの際に不良債権処理に追われ、山一証券と北海道拓殖銀行が破綻したが、銀行が貸しはがしをした結果、自殺者数が前年から8472人増加して3万2863人となったことを受けての通称「モラトリアム法」(正式には「中小企業金融円滑化法」)の名残である。

日本では需給バランスで不動産価格が暴落することは起きたこともないし、今後も起きないだろう。もし、起きるなら、金融庁が不動産事業者に対して引き締めを行うときだけだ。そうなると、金融庁がいつ動くかが事前にわかれば下げ始める前に逃げ切れる(売却できる)ことになる。

根拠がなく、いつ起こるかも明言できないオオカミ少年ネタにおびえるよりも、因果関係が明確なトリガーをウォッチし続けたほうが精神衛生上いいと私は考えている。

沖 有人 不動産コンサルタント

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おき ゆうじん / Yujin Oki

1988年、慶應義塾大学経済学部卒業後、監査法人系・不動産系のコンサルティング会社を経て、1998年に現スタイルアクトを設立。住宅分野において、マーケティング・統計・ITの3分野を統合し、日本最大級の不動産ビッグデータを駆使した調査・コンサルティング・事業構築を得意とする。設立当初から運営する分譲マンション価格情報サイト「住まいサーフィン」の会員数は30万人以上。『マンションは10年で買い替えなさい』(朝日新書)、『タワーマンション節税! 相続対策は東京の不動産でやりなさい』(朝日新書)など著書多数。

 

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