不動産価格が下がる際には金融引き締めが必須になるということだ。不動産事業者は自制して事業縮小することはもちろんできない。銀行も金融緩和下で貸し先が必要なので、不動産事業者への貸し出しを控えることはできない。そうなると、引き締められるのは金融庁だけで、その際には「先高感」がサドンデスで「先安感」に変わることになる。
需給バランス崩壊で「不動産大暴落」は起こる?
次に、大暴落論者の主張に注目してみよう。それは「需給バランス」が崩れて価格が下がるというものだ。過去に日本で需給バランスが理由で価格が大きく下落したことはない。2つのバブルの崩壊は資金が流れなくなったからで、需給ではない。特に住宅は下がらない理由がこれ以外にも存在する。
まず、個人の持ち家から始めよう。1億円でマンションを購入した人がすぐさま9000万円で損切りして売ることは不可能なのだ。たとえ、需要が急減して価格を下げないと買ってくれる人がいなくなったとしても、9000万円では住宅ローンを全額返済できないなら、ローンを貸している銀行は売らせてはくれないので契約は不成立になる。不動産の登記簿に銀行の抵当権が設定されているのはそういう意味がある。
特に、銀行間の金利競争の裏でフルローン比率は6割まで上がっている。フルローンとは購入価格とローン金額が同じであることを指す。売るにしても住宅ローンの残高が9500万円なら、それ以上でなければローン返済できないので売れないのが現実なのだ。
実際、東日本大震災で液状化した湾岸エリアでは買い手がほぼいなくなった。その際に起きたことは、成約価格は以前のままで取引件数が7割減少した。破産しない限り、取引価格は簡単に下げられないのだ。
無料会員登録はこちら
ログインはこちら