朝ドラ「おむすび」をそれでも私が見続ける理由 大阪制作としてのコメディとリアリティを

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NHK大阪による「震災リアリティ」といえば、森山未來と佐藤江梨子が出演したドラマ『その街のこども』(2010年、脚本は『カーネーション』の渡辺あや)が忘れられない。また、これはNHK東京制作だが、朝ドラ『おかえりモネ』(2021年)における、東日本大震災の被災者役・浅野忠信の凄絶な演技も。

求めるリアリティの1つは、そういう意味での「震災リアリティ」である。来年の1月17日は、阪神淡路大震災からちょうど30年となる日なのだから。

そんなシリアス系リアリティに加えて、野球ファンとして思うことは「野球リアリティ」の不足である。

現在(第10週)の時制は2007年。オリックスがコリンズ監督の下、最下位に沈んだ年である。新納慎也や岡嶋秀昭など、オリックスファンが劇中に出てくるが、言葉の端々に成績への愚痴や、イチロー、仰木彬を懐かしむ話のひとつぐらい出てきてもよさそうなものと思うのだが、どうか。

あと何といっても、社会人野球のエースを目指すのに、佐野勇斗はさすがに華奢に見える(関口メンディーは合格)。

脚本家・根本ノンジへの期待

最後になるが、このような期待を捨てられない理由として、脚本家・根本ノンジの存在がある。

『ハコヅメ〜たたかう!交番女子〜』(2021年)、『しろめし修行僧』(2022年)、『パリピ孔明』(2023年)など、彼の作品を追ってきた。特に『ハコヅメ』は気に入って、この連載でも取り上げた(『「ハコヅメ」戸田恵梨香が最強の存在感を放つ理由』)。

加えて今回、先の『NHKドラマ・ガイド 連続テレビ小説 おむすび Part1』への寄稿にしびれた。少々長くなるが、締めの部分を引用しておく。つまり最後の期待は、ここで語っているような「根本ノンジらしさ」をもっと、ということになる。

――この物語に出てくる人々は、歴史に名を残すような偉業を成し遂げた人でもなければ、突出した才能を持った人でもない。我々の身近にいるごく平凡な人ばかりだ。(中略)登場人物は実在の人物ではない。でも今回のドラマを描くにあたり取材に協力していただいた数多くの方々が体験したこと、思い、声が詰まっている。だからまるっきり架空の話ではない。これは平成という時代を生きた私たちの物語だと思っている。その気持ちを忘れずに、心を込めて、精一杯最後まで描きたいと思う。

スージー鈴木 評論家

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すーじー すずき / Suzie Suzuki

音楽評論家・野球評論家。歌謡曲からテレビドラマ、映画や野球など数多くのコンテンツをカバーする。著書に『イントロの法則80’s』(文藝春秋)、『サザンオールスターズ1978-1985』(新潮新書)、『1984年の歌謡曲』(イースト・プレス)、『1979年の歌謡曲』『【F】を3本の弦で弾くギター超カンタン奏法』(ともに彩流社)。連載は『週刊ベースボール』「水道橋博士のメルマ旬報」「Re:minder」、東京スポーツなど。

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