中国人が定年後は仕事をせずに過ごす理由 働きたくても働けない「ワケあり老人」も多い
ここまで見てきたように、中国の高齢者の多くは、仕事の機会に恵まれていない。それだけでなく、人生を楽しむ機会にも恵まれていない。
今の大半の高齢者は、1960年以前の生まれであり、戦争・建国・3年飢饉・文化大革命・上山下郷・改革開放等を経験し、苦労した世代だ。大学進学は難しく、家計のため夢をあきらめた人も多い。
従って、自分がしたような「苦しい思い」を子供たちにさせたくないので、自分は節約しながら子供に大金を使う。いい学校、いい塾、いい服…大学に入れば贅沢三昧、さらに就職先までも必死になって探してあげる。挙句の果ては、結婚も親の責任だと考えコツコツとおカネを貯めていく。
せっかく、ようやく定年になり、楽になれるかと思ったら、孫の教育費用や面倒を考えなければならない。そのため、「自分の人生」は永遠に眠り、自分は何が欲しいか、何か必要か、何があれば楽になれるかについて考えたこともないという人も少なくない。
生き生きと働く日本の高齢者に学べ
そこで、「高齢化社会の先進国」である日本の出番だ。日本の高齢者の「ロールモデル」、つまり趣味、仕事、ボランティアなどを通じて「定年後の人生でも輝ける」「自分らしく、楽しく暮らせる」ことを、中国の高齢者に伝えていくことが必要だ。
そして、ロールモデルに応じた商品・サービスを提供し、「人生謳歌派」の高齢者はもちろん、「ワケあり派」の高齢者にも自己実現ができる定年生活を送ってもらえば、大きなビジネスにつながるはずだ。
筆者が中国でインタビューを行ったある中国女性は、「日本に旅行に行ったのは、定年後自分を見失っていた頃。このときは娘と一緒に買い物と気分転換のために行った。空港で熱心に道を案内してくれた高齢者の係員や、頑張って荷物を運んでくれた高齢タクシー運転手に感動した」という。
彼女は、中国に戻ってから孤児院の夜勤ボランティアをはじめたという。その理由は、「定年になったと言ってもまだ50代。家でぶらぶらするより、日本の高齢者のように世の中のため何かしたいと思うようになったから」と答えてくれた。
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