中国人が定年後は仕事をせずに過ごす理由 働きたくても働けない「ワケあり老人」も多い

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日本では、定年延長や雇用継続制度により、少なくとも65歳まで働く環境が整いつつある。もちろん、タクシーの運転手が高齢者であっても誰も不思議だと思わない。

一方、中国では、高齢者の定義は、60歳以上である。「高齢者」の人口は2014年では2億1200万人に達し、総人口の15.5%を占めるようになった。中国の定年年齢は、男性60歳、女性50歳、幹部クラスの女性は55歳と規定されているため、多くの高齢者は50歳から60歳の間で定年となる。

中国も、日本と同じく高齢化社会に入り、いわゆる「人口ボーナス」(生産年齢人口の増加率が人口増加率よりも高くなること)は終わった。だが中国の高齢者の多くは日本人のようには仕事をしない。なぜだろうか。そのあとの生活はどうなっているのか。

「2種類」に分かれる中国の高齢者

大雑把に言うと、中国では「定年後あまり仕事をしない層」は、2つに分かれる。一つは少数の「人生謳歌派」。もう一つは多数の「ワケあり派」である。どういうことか。前者は自分の第二の人生を豊かなものにするため、今までできなかった勉強・趣味・スポーツ等をする。いわば仕事には見向きもしない人たちだ。一方、後者は、仕事をしたいという要求はあるものの、孫や親の面倒をみる必要などがあり、仕事をしていない人たちのことである。

一方、中国の職場は、「体制内」と「体制外」に分けられるといってよい。以前の職場が体制内の人には「人生謳歌派」が多く、体制外の人には「ワケあり派」が多いとみられる。

体制内の職場とは何か。例えば政府機関、国有企業、大学、さらにはそれに準ずる組織(日本の独立行政法人や特殊法人などに該当)など、中国で主流に位置する職場のことを指す。逆に言えば、その周辺や、それ以外の一般民間企業や外資企業などは「体制外の職場」ということになる。

体制内にいれば、給与は安定し福利厚生も厚く、定年後も、年金以外の各種手当が出る。そのため、現役時代とあまり変わらない月収を得ることが可能だ。インタビューでも確認できたが、体制内の職場で働いていた高齢者は、高学歴の人が比較的多い。一定以上の世代では、ほとんどの大卒者は体制内の職場に就職できたからである。

おカネと知識を持っているため、定年後でも充実した生活を送れる。例えば、年中世界中を旅行している大学教授夫妻もいれば、職場の手厚い住宅制度によって、数百万円で購入したマンションがなんと数千万円に値上がりしたおかげで、趣味に没頭している人も少なくない。

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