たとえば、市街地を時速40kmで走行しているときに5速や6速に入れてみると、タコメーターの針は2000rpmを下回り、クルマ全体の動きが少しギクシャクするような、エンジン車っぽさが出る。
ハンドリングについては、パワーステアリングとリア・リミテッドスリップデフ(LSD)を装備しているため、実に扱いやすい。AE86 BEV Conceptは、サーキット走行も視野に入れて、このアレンジを施したという。
車重は1070kgで、オリジナルのAE86より110kg重いが、重量配分が前後48:52で、オリジナルの54:46に比べると操縦安定性は増している。
開発者に同乗してもらっての試乗の中で、「BEVには(一般的なイメージ以外に)別の楽しさがあるのではないかという発想が、こうした形になった」と笑顔で話してくれたのが、印象的だった。
ただし、事業化への課題は少なくない
最後に、こうした最新エンジンやBEVユニットを使った旧車ビジネスにおける課題を挙げておきたい。もっとも大きな課題は、やはりPL(製造者責任)だ。
パワーユニット単体の品質保証はできたとしても、旧車に搭載するとなると、車体それぞれで各部の劣化状態や交換部品の状況が違うからだ。
マツダが行っている初代「ロードスター(NA型)」のレストア事業のように、メーカー本社にクルマを持ち込んでもらって仕上げる方法もあるが、コストはかなり高額となるだろう。
そこでトヨタは、そうしたマツダ型の発想のほかに、トヨタの新車販売店や自動車関連ショップに対して、新型パワーユニットをキット売りすることも検討しているという。
現実的な方法のひとつであるが、その場合、PLについては法的な解釈上、かなりしっかりした契約書をトヨタと作業にあたる企業、そしてユーザーとの間で結ぶ必要がある。
課題を考えれば、まだまだ「ハードルは高い」と見られる旧車のパワーユニット換装事業だが、トヨタ(およびレクサス)はあくまでも「量産ありき」であり、KINTOでの貸し出しやメディア向け試乗での声を踏まえて、さらに前進しようとしている。果たしてどんな事業として世に出るだろうか。
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