1980年代のAE86型「カローラ・レビン」「スプリンター・トレノ」、いわゆる“ハチロク”に最新パワートレインを搭載した、2つのコンセプトモデルを東京都内の公道で試乗した。
ひとつは「GRヤリス」のG16E-GTS型をノンターボ化したエンジンを積む「AE86 G16E Concept」、もう1台はBEV(電気自動車)の「AE86 BEV Concept」だ。
注目すべきは、これらが単なるコンセプトモデルではない点にある。パワートレインキットやコンプリートカーの販売を視野に入れた、トヨタ自動車の新事業構想のひとつなのだ。
事例のない「実用化」に本気
AE86 BEV Conceptが世界初公開されたのは、2023年1月の東京オートサロン。豊田章男会長(当時社長)が、トヨタが掲げる「Mobility for ALL(=移動の可能性を、すべての人に)」を旧車にも適用するという、驚きの発表だった。「クルマ好きを誰一人置いていかない」とまで言った。
新車のみならず、既存の保有車両についてもカーボンニュートラルに向けた動きを加速させようということに加え、「愛車をいつまでも大切に乗り続けたい」というユーザーの気持ちに沿ったトヨタの提案である。
だが発表当時、メディアからは「おもしろい発想だが、実用化は難しくコンセプトモデル止まりではないのか」という見方をされていた。
なぜならば、こうしたパワートレインのスワップ事業は、車両全体の品質保証を行うことが難しいため、グローバルでもほとんど事例がないからだ。
その後、7月に行われたイベント「FUJI 86/BRZ STYLE 2024」で、今回取り上げるもうひとつのコンセプトモデル、AE86 G16E Conceptを発表。いずれもトヨタは発表時点ですでに実用化に本気であり、量産開発を着々と進めていたのである。
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