「微アルで適正飲酒」推進の裏にある不都合な現実 もはや、メディアに踊らされているにすぎない

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しかし、実態としては流行しているわけではなく、純粋にアルコール度数8%以上のストロング系が、200円以下で購入できた時代への反動(バックラッシュ)が起きているだけと言っていいだろう。

そもそも、前述のような理念のもとで、微アルや低アルで満足できる人々は、酒がなくても豊かな人生を送れているはずだ。

また、酒類メーカーとしては、微アル飲料を足がかりにして、アルコールを嗜む人を増やしたいという狙いもあるだろう。

ただ、こういった戦略についても、筆者はあまり肯定的ではない立場だ。ストロング系に耽溺してきた人間が、健康のことを考えて微アルや低アルを飲むならさておき(満足できない人が大半だろうが)、微アルや低アルで満足できる人々が、昨今の適正飲酒ムーブで酒を飲むなら、それはもう、メディアに踊らされているにすぎないからだ。

もはや、無理したり、周囲に合わせて酒を飲む時代ではないのだ。

“わざわざ”微アルや低アルを飲む理由

他方で、世間のノンアル、微アル、低アルに対するイメージと需要は大きく変化したのも事実だ。

以前、大学時代の友人の結婚祝いでAirbnbパーティーを開催した際、筆者は自分用にノンアルビールをパックで6缶準備しておくように頼んでおいた。

ノンアルコール飲料
店頭に並ぶノンアルコール飲料。味の改良が進み、満足を得やすくなった(筆者撮影)

しかし、当日はアルコール依存症(※当時)の筆者以外にも「肝臓の数値がヤバくて……」という理由でノンアルを飲む人たちが大勢いた。みんなまだ30代前半である。「どの口が言う」と非難されても仕方がないが、みんな身体を壊すのが早すぎるのではないか?

そんな時代だ。もともと晩酌でビールを飲んでいた人たちも、いざ禁酒や減酒を言い渡されても、今はノンアルや微アルのビールテイスト飲料があるため、それで我慢できる。

毎日10缶のストロング系を飲んでいた筆者も、2年間禁酒を続けられている。しかし、それも毎晩ノンアル飲料を4種類(ノンアルビール、ノンアル「檸檬堂」、ノンアル「こだわり酒場のレモンサワー」、ノンアルスパークリングワイン)とコカ・コーラを飲むことでなんとか達成できているのだ(依存症仕草)。そして、酒類メーカーの努力の甲斐もあって味や質は向上している。今ではノンアル単体でも美味しいものが多い。

ノンアルの隆盛は、実際数字にもあらわれている。サントリーホールディングスの調査によると、2023年のノンアル市場は、4133万ケース(対前年101%/1ケース=350ml×24本)と、10年前の1.4倍以上の規模に達したと推定されている。今年の市場規模も4191万ケース(対前年101%)と引き続き拡大が見込まれている。

そんな状況において、わざわざ微アルや低アルを飲む理由とは何なんだろうか?

とどのつまり、ソバーキュリアスやスマートドリンキングはメディアや酒類メーカーが広めたい理念にすぎず、実際には世間に浸透しているとは言いがたい。それよりも、ノンアルや微アルが代替品として親しまれるようになったと考えるほうが現実的だろう。

続く後編ー「低アル飲料」を喜んで飲む人が知らない"真実" むしろ時代によってその基準は変化してきたーでは、低アルコール飲料について、歴史を振り返りながら紐解いていきたい。

千駄木 雄大 編集者/ライター

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せんだぎ・ゆうだい / Yudai Sendagi

編集者/ライター。1993年、福岡県生まれ。奨学金、ジャズのほか、アルコール依存症に苦しんだ経験をもとにストロング系飲料についても執筆活動中。奨学金では識者として、「Abema Prime」に出演。編集者としては「驚異の陳列室『書肆ゲンシシャ』の奇妙なコレクション」(webムー)なども手掛ける。著書に『奨学金、借りたら人生こうなった』(扶桑社新書)。原作に『奨学金借りたら人生こうなる!?~なぜか奨学生が集まるミナミ荘~』がある。毎月、南阿佐ヶ谷トーキングボックスにて「ライターとして食っていくための会議」を開催中。

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