覇権奪取を目指すFacebook動画の新事実 王者YouTubeを撃墜できるか

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追い込みをかけるようにFacebookは、コンテンツ製作者への収入分配比率をYouTubeと同じ55%に設定。YouTubeの製作者を引き抜こうとしているのだろう。だが、まだ主要なパブリッシャーは、両方へコンテンツ提供するところがほとんどだ。加えて、Facebookにも弱みがある。動画の再生カウント方法が不透明なことに加え、海賊版がはびこり、YouTubeコンテンツの無断転載が相次いでいるのだ。

争点は「ビューアビリティ」という新指標

特に判断が難しいのは、フィード内動画広告のオートプレイ(自動再生)である。画面に表示された途端に自動再生する動画は、実際に視聴していない人までカウントしている可能性があると、広告主は不満を持っているという。YouTubeは、そのFacebookが展開する動画広告の「不透明性」を執拗に責め立てている。争点は「ビューアビリティ(Viewability)」だ。

これは「全米広告主協会(IAB)」が定めた指標で、モニター上に動画枠が50%以上表示されたうえ、最低2秒間以上再生されることで、動画広告が有効に機能したものと判断するもの。要は、Facebookのフィード上で動画広告が流れてきても、即座に画面をスクロールされてしまったら、広告としての意味がないということである。

ちなみに、YouTubeのコンテンツ視聴前に流す「プレロール広告」と呼ばれる動画広告メニューには、ふたつの種類がある。全体の85%を占めるスキップ可能の「TrueView広告」 と、最後まで視聴しなくてはいけない通常広告だ。

Googleが提示する一般の動画広告(左)とYouTubeの動画広告(右)の「ビューアビリティ(Viewability)」

加えて、Googleは2015年5月の発表文書で、一般的なデスクトップ上の動画広告では「ビューアビリティ」は53%だが、YouTubeでは87%に達していると主張。さらに動画広告のそれは、モバイルのほうが高まる傾向があり、YouTubeに限れば94%に上るとGoogleは高らかにうたいあげる。

いまだにGoogleは、YouTubeの広告収入の内訳を公表していないが、動画広告の成長は約束されている。投資銀行ルマ・パートナーズの試算では2016年、広告動画市場は前年比34%の成長を遂げ、約100億ドル(約1兆2300億円)に達するという。そこにFacebookがどのように絡んでくるのか、注目したい。

(文:吉田拓史) 

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DIGIDAY[日本版]編集部

2015年9月1日にローンチした「DIGIDAY[日本版]」を運営。同サイトでは米「DIGIDAY」が日々配信する最新のデジタルマーケティング情報をいち早く翻訳して掲載するほか、日本国内の動向についてもオリジナル記事を配信している。メディアジーンが運営

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