コンプライアンスの視点からメンタルヘルスを考えよう--ソフィアカウンセリング・清水智子代表に聞く

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上司がちょっと注意したら、「パワハラだ」と言って会社を休むような人たちが出てきています。「上司にパワハラを受けてうつ病になったので、精神科に行ってきます」という調子です。これまでは隠すようなことなのに、隠さない。それが「新型うつ」の特徴です。

病院に行っては、「休養が必要との診断書を書いてください」と言ったり、抗うつ剤の種類まで指定して要求するなどということもあるようです。しかし、専門医が診断してもうつ病の診断基準を満たさない、病気じゃない、といったような問題がたびたび起きています。それでも中には休職診断書を書いてくれる場合もあって、そうした状態で休職しながらも、海外旅行に行ったりするというような事例は、「新型うつ」を象徴的に表しています。

--それはうつ病とは言えないですね。企業は困惑するばかりですね。最後になりますが、メンタルな病について、企業サイドにアドバイスするとすれば教えてください。

メンタルヘルス対策を行う目的と意義は、企業は安全配慮義務を遂行しなければならないということです。業務との関連のなかで社員がメンタル不調を患い、最悪は自殺という経過となった場合などには、安全配慮義務を怠ったとしてコンプライアンス違反行為となります。

かつて長時間労働を見過ごして、うつ病に陥った社員が自殺した事件(電通事件)では、会社側が敗訴、その後の和解で1億5000万円超の賠償金を支払いました。企業はメンタルヘルス対策を行う上では、福利厚生としてではなく、あくまでコンプライアンスの視点が重要です。そこをしっかりと遂行できている企業においては、働く社員一人一人のパフォーマンスが上がり、企業全体のパフォーマンス向上につながるわけですから、企業ブランドを守り、さまざまな意味での「企業価値の向上」というところを目指すことになるわけです。

--重要な視点ですね。長時間におよび不躾なインタビューに真摯にお答えいただき大変ありがとうございました。


清水 智子(しみず さとこ)
ソフィアカウンセリング代表取締役。臨床心理士、精神保健福祉士、産業カウンセラー、CEAP国際EAP協会公認EAPコンサルタント。国家公務員共済組合連合会東海病院にて相談業務を開始、心療内科クリニック、教育委員会スクールカウンセラーを経て現職

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