(第30回)工場のない生産こそアップル高収益の源

どちらも、日本では有数の利益率を実現する高収益企業である。しかし、どちらもオーソドックスな日本企業とは見なされていない。日本でファブレス化できるのは、日本的ではない企業なのだ。日本企業が水平分業化・ファブレス化できない理由は、企業の本質的性格にある。すなわち、利益の追求ではなく、「従業員共同体の維持」が企業経営の目的になっているからだ。

しかし、こうした「日本式モノづくり」に固執したため、PCで敗れ、液晶テレビでも敗れた。日本企業が得意なのは、自動車、鉄鋼のような、摺り合わせ型製品である。電気機器でも、ウォークマンの時代には精密部品の摺り合わせが必要だったので、日本が強かった。しかし、デジタル化で優位性が失われた。一般に、摺り合わせの必要な機械部品がなくなると、生産は水平分業化する。そして、右に述べた企業体質のために、日本企業はこの変化に対応できない。

近い将来に、デジタル一眼レフでミラーレスが一般化し、そうなるだろう。そして、電気自動車への移行に伴い、自動車でも水平分業化が進展するだろう。

野口悠紀雄(のぐち・ゆきお)
早稲田大学大学院ファイナンス研究科教授■1940年東京生まれ。63年東京大学工学部卒業、64年大蔵省(現財務省)入省。72年米イェール大学経済学博士号取得。一橋大学教授、東京大学教授、スタンフォード大学客員教授などを経て、2005年4月より現職。専攻はファイナンス理論、日本経済論。著書は『金融危機の本質は何か』、『「超」整理法』、『1940体制』など多数。(写真:尾形文繁)


(週刊東洋経済2012年1月14日号)
記事は週刊東洋経済執筆時の情報に基づいており、現在では異なる場合があります。
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