正確に言うと、アップルの高収益を支えているのは、アイディアとブランドだけではない。それらを活用して実際に製造を行う方式だ。
アイサプライ社は、初代iPadの部品コストも調査していた。それと表に示したiPad2を比べると、供給メーカーには変化が見られる。部品の中で最も費用の高いディスプレーは引き続き韓国のLG社製だが、他の部品では、供給メーカーが変更されているものもある。
供給メーカーの構成は、固定的なものではなく、他のメーカーへの切り替えがなされる。また、設計の変更もある。つまりこれは、固定的な下請け関係による部品生産ではなく、市場を通じて部品を調達する水平分業方式の生産なのだ。
これが製造業の新しい姿である。コストの低い単純労働力が使える時代になったのだから、それを使う。しかも、それらとの関係は固定化せず、条件の変化に応じて見直し、つねに最適な相手と取引する。利益が毎年2倍という驚異的な高収益を上げているのは、アップルがこのようなビジネスモデルを実現しているからなのだ。
「スマイルカーブ」は日本では成立しない?
かつて、「スマイルカーブ」という概念が議論されたことがある。これは、台湾のPCメーカー、エイサーの創始者であるスタン・シーが、1990年代の末に提唱したものだ。PCの製造過程での付加価値を例にとって、「製品の開発段階は高収益。生産・組立という製造工程は低収益。販売・アフターサービスは高収益」とした。これを表す曲線が、笑顔の口線に似ていることから、「スマイルカーブ」と名づけられた。