仮にこうした構造的理由があるのだとしたら、現在でも日本の製造業は世界に冠たる産業であり続けているだろう。しかし、現実には、日本の製造業は敗北につぐ敗北を強いられることになったのである。
実は、製造・組立工程という中間段階の利益率が最も高くなることこそが、問題であったのだ。中間段階の利益率が保証されるのは、自動車生産のように、部品相互の調和が重要な製品だからなのである。そして、05年頃には、異常な円安に支えられて、そのような産業の輸出競争力が異常に高まったからなのである。それは、結局は経済危機で崩壊するバブルに過ぎなかったのだが、04、05年当時には、そのことは認識しえなかったのだ。
日本でファブレス化したのは異端的企業
液晶テレビに関しては、わずか5年前に、シャープ亀山工場のパネル生産が絶賛された。これは、垂直統合生産の典型だ。しかし、結局は撤退せざるをえなくなった。そして、ソニーもパナソニックも赤字に悩んでいる。スマイルカーブの中間で利益を上げようとする日本企業は、ことごとく赤字と低利益から抜け出すことができない。
ところで、日本にもファブレス企業はある。典型例は任天堂だ。かつては日本国内の委託企業で製造組立を行っていたが、現在は中国にある鴻海精密工業で製造している。船井電機も、かつては国内生産を行っていたが、現在では、海外の子会社や委託企業で生産を行っている。