激安眼鏡JINSの挑戦、“機能性”で新市場を狙え
実はジェイアイエヌは眼鏡の価格破壊を主導してきた張本人。だが、それだけでは眼鏡市場はますます小さくなってしまう。「眼鏡を必要とせず、これまで眼鏡店に足を運ばなかったユーザーを掘り起こし、新しい市場を作り出す必要がある」(田中仁社長)。そうした狙いから、機能性眼鏡の強化に踏み出した。
不信感招き客離れ 新料金体系と大ばくち
もともと、服飾雑貨の製造卸売り・小売業として誕生したジェイアイエヌが眼鏡事業に参入したのは01年のこと。田中社長が訪れた韓国で、眼鏡が日本の約10分の1の3000円で販売されているのを見て、眼鏡市場への参入を決めたのだ。
それまで日本の眼鏡専門店は、フレームを問屋や商社から仕入れていたため、中間マージンにより販売単価が高止まりしていた。ジェイアイエヌは雑貨小売りで培ったSPA(製造小売業)のノウハウを生かし、自社企画したフレームを海外で製造し直営店で販売することで、5000円と8000円という当時としては破格の値段を実現した。同じ頃にインターメスティックが始めた「Zoff」とともに、眼鏡界のユニクロとして若者を中心に人気を博した。06年には株式上場も果たした。
だが、ブーム終息は早かった。上場時にはすでに利益成長が鈍化。08年8月期には既存店の不振から最終赤字に転落した。業績悪化の主因はわかりにくい価格体系にあった。店頭表示価格は安くても、レンズの薄さや度数、ブランドなどによって1万円以上の追加料金がかかるケースが多く、「結局は高くつく」という消費者の不信感を招いたのだ。
上場で得た資金で安易な店舗展開に走ったことも裏目に出た。06年に雑貨と眼鏡を融合した新型店を開発し大量出店したが、「眼鏡は医療器具。雑貨と併売することで眼鏡専門店としての信頼性が落ちた。完璧な戦略ミス」(田中社長)。
起死回生を果たすべく、09年5月には新価格体系を導入。当時、一律1万8900円、追加料金なしでレンズを選べるメガネトップの「眼鏡市場」が成功を収めていた。JINSは1万円以下の低価格を維持したうえでレンズの追加料金をなくした。