三菱地所、「日本一の超高層ビル」計画の薄氷 甦る「ランドマークタワー」の苦い記憶

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常盤橋街区の再開発は、同社が中心となって進めている「大手町連鎖型再開発プロジェクト」の一環として、計画されてきた。連鎖型とは、建物の建て替えの際、引っ越しが一度で済むように換地を繰り返す手法。第1次再開発が竣工したら、第2次再開発の地権者がそこへ移るという具合だ。常盤橋はその集大成という位置づけである。

「常盤橋は丸の内、大手町に日本橋、神田、八重洲を含めた、広域東京駅周辺地域の中核的エリアとなる。隣接する地区との連携を保ちつつ、街づくりを進めたい」(三菱地所の合場直人専務)

周辺は歓迎ムードだが…

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東京駅日本橋口の正面に広がる常盤橋街区。現在は4棟のビルが建っている(撮影:今井康一)

実際に日本橋エリアから見ると、常盤橋は東京駅からの動線に当たる。日本橋に本社を置くライバルの三井不動産も、「今回の開発は日本橋地域にとっても価値向上につながる」と好意的にとらえる。

近隣でオフィスビルを建設中の中堅不動産デベロッパーも「競合する懸念より、地域の活性化によるメリットが大きい」と語る。

むしろ警戒しなければならないのは、ほかならぬ三菱地所自身かもしれない。思い起こせば、同社は過去にも“日本一の超高層ビル”を建設したことがある。1993年に横浜市のみなとみらい21地区に竣工した横浜ランドマークタワー(高さ296メートル)だ。

同地区のシンボルとするべく、「日本一の高さの建物を建てるという強い意志の下、総事業費2700億円をかけて建設した」(三菱地所)。が、巨額投資は長年にわたり、同社を悩ませてきた。

賃料などの収入が当初の計画に届かず、2002年と今年3月の2度にわたり損失処理を行った。特別損失額は累計で1000億円を超えたとみられる。

新国立競技場問題が示すとおり、規格外の建物は採算のよいものではない。ランドマークタワーから高さ日本一の座を奪うビルは、14年に竣工したあべのハルカス(大阪市、高さ300メートル)まで、21年間も現れなかった。そのことがこのビルの怪物ぶりを示すとともに、突出したビルを建設することに対する不動産各社の警戒心を物語る。

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