「絶望はない」ミャンマー人難民に35年間医療従事 カレン族の医師シンシア・マウンさんに聞く

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――少数民族武装勢力「カレン民族同盟」(KNU)や反国軍勢力との関係は。

KNUをはじめとする少数民族グループとは緊密に連絡を取り合っていますが、医療ネットワークを維持するという観点で協力しています。国軍から抑圧された人々や医療関係者を守り、人権やヘルスシステムを向上させることに重点を置いています。

――日本人へのメッセージを。

日本人や日本政府のこれまでの支援に感謝しています。しかし、国軍による攻撃で人々は危機にさらされており、虐殺や人権侵害といった事態に国際社会は対応してほしいです。日本もその中に含まれます。

協力の形はさまざまです。緊急援助だけではなく、医療や教育システム、地域や市民社会の持続的な発展に寄与してほしいと願っています。とくに子どもと女性への支援を期待しています。

若者たちこそ希望

筆者は2012年、患者やその家族らであふれかえる野戦病院のような当時のクリニックを訪ね、彼女にインタビューした。亡命したときは「半年で帰るつもりだった」と言いながら「国境の人権状況が改善するまでこの地にとどまる」と決意を語っていた。

来日したシンシア・マウンさん(写真・柴田直治)

それからさらに12年。出国以来すでに35年が経過した。民主化が前進した10年足らずを経て、軍事政権の復活で人々の生活や安全、人権をめぐる状況は暗転し、悪化の一途をたどっている。

それでもマウンさんは「人々の考え方(Mindset)が変わるのには時間がかかります。何世代かを要するかもしれません」とゆったり構えている。

「絶望しませんか」。そう尋ねると、即座にNOと答えが返ってきた。

「(クーデターのように)同じことが繰り返されても、若い人たちが次々と教師や医療従事者としてボランティア活動に参加してくれます。確信をもって団結し、コミットする若者たちがこれからも現れ、地域のリーダーになってくれるでしょう。彼らこそが希望なのです」

若い人に将来を託すためにも「教育、権威主義に抑圧されていない教育が大切です」。厳しい状況にあっても激することのない彼女は、そう付け加えた。

柴田 直治 ジャーナリスト、アジア政経社会フォーラム(APES)共同代表

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しばた・なおじ

ジャーナリスト。元朝日新聞記者(論説副主幹、アジア総局長、マニラ支局長、大阪・東京社会部デスクなどを歴任)、近畿大学教授などを経る。著書に「ルポ フィリピンの民主主義―ピープルパワー革命からの40年」、「バンコク燃ゆ タックシンと『タイ式』民主主義」。

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