トランプは威信を懸けてウクライナを停戦させる 「威信」こそがアメリカファーストの根幹だ

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プーチンは、一方でどんどん領土を広げ、ロシア系住民の多いヘルソン、ザポロージャを含む地域をロシア領にして、ウクライナをNATOに属さない中立の状態にするという方向で動くであろう。

ウクライナ戦争の終結がどうなるのかは、世界にとって大きな問題だが、トランプのアメリカ、ヨーロッパ、ウクライナ、そしてロシアとの関係で、まだまだ終着点が見える段階ではなさそうである。

なんといっても、ウクライナ戦争での敗北はアメリカの威信の敗北となりかねない。トランプはそうはしたくないはずである。

できれば、アメリカの威信でロシアとウクライナの戦争が終わり、ともにアメリカの命令に従ってそうなったのだという成果をあげたいはずである。

NATOはどう出るか

しかしウクライナも、ロシアも引くに引けない状態であることは間違いなく、ウクライナは、最後はキーウまで占領されるところまで行き着いて海と国土の半分を失うことになるか、それとも完全消滅するか。

ロシアは、当初予定したロシア系住民の地域だけを手っ取り早く獲得し、ウクライナを中立化することで終わるか。これらはすべてNATOの出方次第である。

戦況から言えば、トランプ案はロシアにもウクライナにも譲歩を迫ることになるだけに、妥協可能な案かもしれない。しかしそうなれば、ヨーロッパがロシアという脅威に対し、自らの力で守り抜くしかない。となれば、困ることになるのはヨーロッパである。

的場 昭弘 神奈川大学 名誉教授

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まとば・あきひろ / Akihiro Matoba

1952年宮崎県生まれ。慶應義塾大学大学院経済学研究科博士課程修了、経済学博士。日本を代表するマルクス研究者。著書に『超訳「資本論」』全3巻(祥伝社新書)、『一週間de資本論』(NHK出版)、『マルクスだったらこう考える』『ネオ共産主義論』(以上光文社新書)、『未完のマルクス』(平凡社)、『マルクスに誘われて』『未来のプルードン』(以上亜紀書房)、『資本主義全史』(SB新書)。訳書にカール・マルクス『新訳 共産党宣言』(作品社)、ジャック・アタリ『世界精神マルクス』(藤原書店)、『希望と絶望の世界史』、『「19世紀」でわかる世界史講義』『資本主義がわかる「20世紀」世界史』など多数。

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