妻との「永遠の別れ」男性が現実を受け入れるまで 「悲しいけれど」妻のいない人生を考えていく

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そう話される目は寂しげでしたが、少し輝いてもいました。

「まずどちらに行かれるんですか?」と尋ねると、「新婚旅行で行った指宿(いぶすき)温泉だね」と答えてくれました。

関西学院大学
「悲嘆と死別の研究センター」は関西学院大学に設置されている(写真:KAZE / PIXTA)

できることを模索していくなかで、気持ちに変化が生じ、新たな希望が芽生えることもあります。

亡き人がいない毎日を生きていく覚悟ができるようになる人もいれば、なかなかできない人もいます。

悲しみは乗り越えるものではなく、自分が生きているかぎり抱えていくものだと感じるようになるかもしれません。

悲しみはなくならないとしても、悲しみのいろや形は変わっていくものだと思います。

嘱託社員として働くことに

「もういない」という現実を見つめることで、悲しみがいっそう深くなることもありえます。

しかし、覚悟ができ、悲しみとともに生きていく方法を考えられるようになったりもするものです。

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3カ月がたった頃、久しぶりに先ほどの男性が私どものところに来られました。九州の温泉地をめぐり、戻ってこられたそうです。

ひとり旅は寂しかったけれど、いつも奥様が一緒にいてくれるような気がしたことや、寂しさや苦しさは自分で抱えて生きていくしかないと気がついたことを話してくれました。

「これからは、これまで働いていた会社で嘱託社員として働くことにしたんだ」

こう決断された男性の言葉は、奥様がもういないということを受けとめ、これからの日々に希望を見いだそうとしているようにも思えました。

受け入れがたい現実に向き合うためには、準備のための時間が必要だったりします。

精神的にも身体的にも準備が整うときまで、あせらずに待つことも大事です。

(まとめ)「失ったもの」「失っていないもの」を考えてみる
坂口 幸弘 関西学院大学「悲嘆と死別の研究センター」センター長

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さかぐち ゆきひろ / Yukihiro Sakaguchi

関西学院大学「悲嘆と死別の研究センター」センター長、同大学人間福祉学部人間科学科教授。専門は臨床死生学、悲嘆学。
30年近くにわたり、死別後の悲嘆とグリーフケアについて研究・教育にたずさわる一方、ホスピスや葬儀社、保健所、市民団体などと連携し活動してきた。

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赤田 ちづる 関西学院大学「悲嘆と死別の研究センター」客員研究員

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あかだ ちづる / Chizuru Akada

関西学院大学「悲嘆と死別の研究センター」客員研究員。
上智大学グリーフケア研究所、関西学院大学大学院人間福祉研究科で学んだのち現職。
研究のかたわら、主に関西を拠点として、グリーフケアの実践活動や支援者の養成に広く取り組む。

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