自衛隊「対敵特殊部隊」訓練が非現実的な理由 特殊部隊が侵入できない日本の現実を考えていない

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それよりも確実な作戦に使う。破壊工作なら山奥にある送電線の鉄塔のボルトを抜いて倒すような地道な活動である。自衛隊基地を狙うとしても侵入はしない。

深夜に1キロメートルほど離れた場所からライフルを射掛ける。それにより被害確認や警備警戒となり、基地総員を夜中に叩き起こす嫌がらせである。

あるいは、スパイや扇動に転用するかだ。日本社会で自由自在に動き回れる貴重な人材である。戦闘に使うよりも、普段の情報収集や不満分子の扇動、反体制運動への援助に使ったほうがよい。敵国はそのようにも考える。

破壊工作の目的も、破壊ではなく負担増大である。警察の検問強化で交通や輸送を停滞させる。さらには、それにより日本経済の効率も落とす。自衛隊に後方警備を強要する。それにより前線に送り込む戦力を減らす。また隊員を疲労させて航空機や艦艇の可動率を落とす。

それが特殊部隊本来の用途である。もともと直接的な戦果をあげるための戦力ではない。潜水艦と同様に、敵国に後方警備を強要して戦力分散を図る戦力なのだ。

レンジャーの侵入もやめたほうがよい

敵国の特殊部隊は自衛隊基地には来ない、そう判断できる。それからすれば、今の自隊警備は過剰すぎる。警備を実施することで、本来の基地機能の発揮が損なわれる事態は間違えている。現実的にありうる事態に焦点を合わせ、それに充分に対処できる水準まで切り下げるべきだ。

とくに、警備過熱の原因となる勝負形式の演習はやめたほうがよい。現状からすれば、陸自レンジャーも勝つことにこだわりすぎている。

そのために演習でしか通用しない、非現実的もいいところの極端な、エクストリーム手法での侵入を図っている。それを続けても双方ともに訓練としての利益は生まないからである。

文谷 数重 軍事ライター

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もんたに すうちょう / Sucho Montani

1973年埼玉県生まれ。1997年3月早大卒、海自一般幹部候補生として入隊。施設幹部として総監部、施設庁、統幕、C4SC等で周辺対策、NBC防護等に従事。2012年3月早大大学院修了(修士)、同4月退職。現役当時から同人活動として海事系の評論を行う隅田金属を主催。ライターとして『軍事研究』、『丸』等に軍事、技術、歴史といった分野で活動

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