近年自衛官が殉職する痛ましい事故が多発している。自衛隊の任務は過酷であり、どんなに気をつけても訓練で一定の確率で事故が起こるのは不可避ではある。しかしながら、適切に対策を取れば多くの事故が未然に防げるもの事実である。だが自衛隊が殉職事故を真摯に反省し、対策を取っているようには思えない。多くの場合、直接的な原因には言及されるが、もっと川上の根源的な問題は放置されているように思える。
本年5月に陸上自衛隊の北富士演習場における第1普通科連隊の手榴弾の投擲訓練で、手榴弾が爆発した際、隊員が手順通りに弾を投げているか確認する係だった男性隊員(2曹)の首に破片が当たり、死亡した。7月に出た報告書では2曹が手榴弾の破片が飛び散る際の軌道や防護の体勢を正しく認識しておらず、指揮官も指導していなかったことが原因と結論づけた。だが述べられている対策ではさらなる事故が起こる可能性がある。
陸自の報告書に記載された原因
7月に公表された陸自の報告書には以下の通りの原因が書かれている。
そして以下の対策が示されている。
だが報告書には触れていない事実が存在する。掩体壕に隠れても破片は放物線を描いて飛んでくるので被弾する。このため他国の軍隊では手榴弾の投擲訓練では掩体壕に隠れるだけではなく、退避壕の中でもヘルメットの頭頂部を手榴弾の爆発する方向に向けることによって頭部、顔面、頸部を保護する。
これを行っていれば件の2曹の被弾は顔面と頸部だったので防げたはずだ。これは必ずしも遮蔽物がない実戦でも有用な防御方法だ。だがこのような指導を陸自では行ってこなかった。陸自では教範を見直すといっているが現状どうなるは不明だ。
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