選挙で見えた日本とアメリカ「残念なほどの違い」 アメリカ大統領選で国論が分裂した根本理由

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以上で見たような論争が起きるのは、ほぼアメリカに限定されたことであると言ってよい。先ごろ行われた日本の総選挙において何が争点だったかを思い出してみよう。

ここでの最大の争点は、政治資金の問題であった。それが重要な問題であるのは間違いない。しかし、経済問題に関して何が争点だったかを思い出すことができない。そもそも、争点とすべきことがなかったと言っても過言ではないだろう。

日本経済が変化していないから「争点」がない

日本経済に問題がないから、争点がないのではない。そうではなく、日本経済が変化していないから、争点がないのだ。

これは、いまに始まったことではない。1980年代からの中国の工業化によって、日本の製造業は大きな影響を受けた。しかし日本は、アメリカのように新しい産業を成長させることによってそれに対応したのではなく、従来の産業構造を温存することを目的にして円安、金利金融緩和の方向を取った。

このため、日本は失業率の大幅な上昇というような深刻な問題に直面することはなかった。しかし、その半面で、産業構造の改革が進まなかった。そして、世界経済における日本の地位が低下した。

日本の場合、現在の日本で支配的な産業は、1980年代に支配的な産業とほとんど変わらない。それは、従来タイプの製造業や金融業だ。サービス産業に新しい企業が現れているのは事実だが、それが経済構造を大きく変えるまでには至っていない。

アメリカの場合に国論が分裂するような争点が提起されるのは、国全体がダイナミックに変化していることの反映なのである。

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野口 悠紀雄 一橋大学名誉教授

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のぐち ゆきお / Yukio Noguchi

1940年、東京に生まれる。 1963年、東京大学工学部卒業。 1964年、大蔵省入省。 1972年、エール大学Ph.D.(経済学博士号)を取得。 一橋大学教授、東京大学教授(先端経済工学研究センター長)、スタンフォード大学客員教授、早稲田大学大学院ファイナンス研究科教授などを経て、一橋大学名誉教授。専門は日本経済論。『中国が世界を攪乱する』(東洋経済新報社 )、『書くことについて』(角川新書)、『リープフロッグ』逆転勝ちの経済学(文春新書)など著書多数。

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