トランプに学ぶリーダーシップのアピール技術 アメリカ大統領選を制した言語スキルとは

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トランプ氏の行った「不満の問いかけ」という要素を真似るならば、

「最寄りの○○駅からここまでの道はすぐわかりましたか?迷わず来ることができましたか?」

など困りごとを問うのもよいでしょう。このように相手が持っている気持ちを代弁して同じ気持ちになることです。そうすると、同調効果によって一体感が生まれます。

回り道をして登場し、「重厚感」を印象づけたハリス氏

一方、ハリス氏も投票前夜までトランプ氏に勝るとも劣らない人気だったのは確かです。今年9月に行われたテレビ討論会後の世論調査では、討論会を視聴した有権者のうちハリス氏が勝利すると答えた人は63%。トランプ氏の37%を大きく上回っていました。

国民が彼女に惹きつけられた理由は何でしょう。同じように「伝え方」という視点で分析すると、ハリス氏のうまさは非言語スキルにあります。

伝え方は、言語(バーバル)スキルと非言語(ノンバーバル)スキルの2つから形成されます。話す内容や言葉遣いという「何を話すか」が言語スキル、「どのように話すか」という表情やジェスチャー、声などが非言語スキルです。

討論会にはハリス氏は濃紺のパンツスーツ、トランプ氏は赤色のネクタイと紺色のスーツという両者おなじみのいでたちで現れました。登場後、ステージ左右に設けられたそれぞれの演壇に立つまでの間。このわずか8秒の間のふたりの非言語スキルの違いに討論会の勝敗が現れていました。ポイントは「歩き方」です。

トランプ氏は左手袖からゆっくりと歩いて登場し、演台の後ろに立ちました。このときの歩数は3歩。一方、ハリス氏は右手袖から同じく大股でゆっくりと登場し、一度トランプ氏がいる左側に向かい、自分から握手を求めます。握手後に右手にある自分の演台につきました。このときの彼女の歩数は11歩。距離が長くなった分、トランプ氏の約3倍の歩数になりました。

ハリス氏は、遠回りをしてより多く歩き、自分が主導して握手をするという非言語で、「この場を仕切っているのは自分だ」ということを言語外で伝えておくことに成功しているのです。

話し手は、実際にはどういう肩書・立場の人であっても、話している間は、その場を仕切るリーダーです。話す目的として説得や交渉がはいるのであれば、なおさら。その役割をまっとうするために取り入れやすいのは、ハリス氏も行った「歩き回る」という行為。

これは、動物のマーキング行動のようなイメージです。犬や猫などの動物が自分の匂いを残すため糞や尿をかけたりしてなわばりを宣言するのがマーキングです。話しながら部屋の中を歩き回ることで、全体を支配しているという印象を与えます。ハリス氏はこれを登場の段階で取り入れたのです。

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