過去10年で最大の流行「マイコプラズマ肺炎」とは 知っておきたい感染経路、症状、検査、予防、治療
実は、多くの医師は「マイコプラズマ感染なら見落としても問題ない」と考えている。
その理由については後述するが、こうした医師とは対照的に、一般の多くの人はマイコプラズマに恐怖心を抱いているように思う。高橋謙造・ナビタスクリニック小児科部長は、「家族内に高齢者や小さな子どもがいる人に、その傾向が強い」と言う。
「高齢者がマイコプラズマに感染すると肺炎になって、“コロナのようにあっというまに亡くなってしまう”というイメージを持っている人が少なくない」そうだ。このあたり、医師と患者さんでは感覚が異なる。
だが、マイコプラズマは正しく知れば決して怖い感染症ではない。むしろ、むやみに怖がりすぎて「やってはいけない」ことをやってしまっている向きがある。
本稿では、その実態を解説したい。
そもそもマイコプラズマって何?
まずはマイコプラズマとは何かについて説明しよう。
マイコプラズマは「自己増殖可能な最小の微生物」といわれるユニークな存在だ。ウイルスは特定の宿主に感染しなければ増殖できないが、マイコプラズマは自力で増殖できる。このため、微生物学的にはウイルスではなく、細菌に分類される。
ただ、大腸菌など普通の細菌とは性格が異なる。特記したいのは、細胞壁を持たないことだ。
そのため、細胞壁の合成を阻害することで作用するペニシリンやセフェムなど、多くの抗菌薬はマイコプラズマに効かない。後述するように、マイコプラズマ感染を疑えば、特殊な抗菌薬を使うことになる。
感染しやすいのは子どもで、肺炎を起こすこともある。2015年にアメリカの疾病管理センターを中心とした研究チームが、『ニューイングランド医学誌』に発表した研究によれば、入院した子どもの肺炎患者のうち、22%がマイコプラズマによるものだった。
注目したいのは、この22%のうちの19%が5才以上の子どもだったこと。5才未満は3%にすぎなかった。これは日本の状況とも一致する。感染研の調査によると、7~8才にピークがあるという。
学童期以降の子どもが罹りやすいのは、マイコプラズマの感染の仕方によるところが大きい。
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