がんになったIT経営者が直面した「葛藤と現実」 2度の治療で「身長176センチ、体重46キロ」に

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しかしある日、妻の言葉で目が覚めました。

「会社を売却したら、もう何もやらなくていいんじゃない? 私も仕事をしてるんだし。仮に働く必要がなくて、やりたいことだけやればいい状況になったとして、それでもどうしても仕事がやりたいのであれば仕事をすればいいけど、そうでないなら無理に何かをしようとする必要はないよ」

この言葉には衝撃を受けました。「そうか、何もしないという選択肢があったのか」と。

自分が勝手に縛られていた固定観念を初めて疑うことになりました。会社に固執せず、思い切って手放すことで、また新しい人生がひらけるかもしれない、と思うようになっていきました。

友人や先輩に相談しながら、会社の売却について具体的に検討し始めました。ベンチャー企業のM&Aの専門家を何人か紹介してもらって相談していきました。

会社は自分の子どもであり自分自身でもある

創業者にとって、自分が立ち上げた会社は自分の子どものようなものだとよく言われます。私にとってはアイデンティティ、つまり自分自身でもあります。

自分の子どもあるいは分身を安心して任せられる信頼できる買い手が現れるのか、当初は非常に不安に思っていました。実際、すぐに見つかるようなものではありませんでした。

それでも売却先を探し始めてから何カ月か経ったころ、幸いにして手を挙げてくれる会社がいくつか出てきました。その中に、オーシャンブリッジと近い市場で事業を展開していてベンチャーマインドも持った会社がありました。それが、現在のオーシャンブリッジの親会社である株式会社ノーチラス・テクノロジーズです。

話し合いを進めていくと、この会社はオーシャンブリッジの創業理念や価値観、カルチャー、そして人材を非常に尊重してくれていました。買収してからも自社に吸収合併することなく、グループ内の一社として、引き続き独立した企業として経営していく方針だといいます。

もちろんリストラなどすることはなく、会社としての個性を活かしつつ、グループ内でシナジーを生み出していくということです。売却の重要な条件として考えていた全社員の雇用の継続も約束してくれました。話し合いを重ねるごとに、ぜひこの会社にオーシャンブリッジの未来を託したい、という思いが強くなっていきました。

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