がんになったIT経営者が直面した「葛藤と現実」 2度の治療で「身長176センチ、体重46キロ」に
私が設立したオーシャンブリッジは、海外のIT企業が開発したソフトウェアをローカライズ(日本語化)して日本市場で販売し、サポートを提供するビジネスを手掛けており、大企業や官公庁、自治体など幅広いお客様を抱えて事業を展開していました。
お客様から「オーシャンブリッジさんのおかげで業務効率が上がりました!」といった喜びの声をいただくたびに、世の中に貢献できているという手応えを感じていました。海外と日本の「架け橋」としてのオーシャンブリッジの存在価値を実感することができました。
30歳で人生をかけて立ち上げたオーシャンブリッジという会社は、自分のアイデンティティの大きな部分を占めていたのです。
起業した会社に戻りたいのに戻れない
しかし、リハビリを続けながら少しずつ会社に顔を出せるようになってしばらくすると、幹部社員から、
「高山さんがたまに会社に来て社員に指示を出すと現場が混乱します。100%働けるようになったら会社に戻ってきてください。それまでは会社は自分たちが守りますから、高山さんは療養に専念してください」
と言われてしまいます。
思いがけず老害の一歩手前、いや老害そのものになっていました。
そして、あるとき気づきました。ここからどんなにリハビリに励んだとしても70%程度まで回復するのがいいところではないか。100%、いや90%にすら戻すのは無理なのではないか、と。
つまり、もう以前のように仕事をすることはできないと悟ってしまったのです。
もはや経営者として以前のように自分が納得できるような働き方ができないのであれば、自分はどうすべきか。何カ月も悩みました。
そうして悩みに悩んだ結果、仕事も、経営者の立場も、そして会社そのものも手放すのが、自分にとっても会社にとっても一番よいという考えに至りました。
中途半端に会社にぶら下がり、創業者で大株主であるというだけで、大した仕事もせずに会社から給料を吸い上げるようなことはしたくありません。だったらきっぱりと会社から身を引こう、と思ったのです。
とは言え、自分のアイデンティティでもある会社を本当に手放せるのか。
そもそも自分の収入がなくなったら、家族3人でどうやって食べていくのか。
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