アメリカのインフレは再び深刻化する懸念がある 当局も市場も楽観的で、今後は警戒が必要だ
アメリカのインフレは本当に収まったのだろうか。
9月17~18日の両日に開かれた連邦公開市場委員会(FOMC)で、当局は0.5%の大幅利下げに踏み切った。その際、多くの市場関係者は、今後の懸念材料は雇用や景気の落ち込みであり、インフレは既に過去のものになったと考えたことだろう。
ジェローム・パウエル議長をはじめ、連邦準備制度理事会(FRB)の高官も、その後の講演などで、0.25%ではなく0.5%の利下げに踏み切ったのは、主にインフレが落ち着いてきたことが理由であり、景気は依然として底堅く推移していると発言している。FOMCやその後の一連の発言などで、景気の落ち込みは限定的で、インフレ懸念だけが後退するという、「アメリカ経済のソフトランディング」が実現するとの楽観的な見方が強まったのは間違いない。
再び長期金利は4%を突破
しかしながら、10月4日に発表された9月のアメリカの雇用統計を受けて、状況は少し変わってきたようだ。同統計では非農業雇用数が前月比25万4000人の増加となり、市場の事前予想を大幅に上回る伸びとなったほか、失業率も4.1%と、やはり前月の4.2%から低下した。
これは景気や雇用は緩やかに減速しているどころか、まだまだ堅調さを維持している可能性が高いということだろう。やはり3日に発表された9月のISM非製造業指数が54.9となり、2023年2月以来の水準まで上昇したことをみても、アメリカの景気はサービス業を中心に堅調を維持していることがみてとれる。
それまで景気の急速な減速やFRBによる大幅利下げを織り込む形で、低下基調が続いていた同国の長期金利は、こうした強気サプライズ指標を受けて上昇基調にあり、10年債の利回りは再び4%を突破している。
無料会員登録はこちら
ログインはこちら