アメリカのインフレは再び深刻化する懸念がある 当局も市場も楽観的で、今後は警戒が必要だ

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ただし、本当に警戒すべきは景気の過熱リスクというよりは、インフレ圧力が改めて強まるシナリオではないか。

「港湾労働者6年で60%強賃上げ」の影響は小さくない

特に賃金の高止まりが続いていることには十分な注意が必要だ。雇用統計では時間あたり賃金の伸びが前年比で4.0%増と、2カ月連続で市場予想を上回った。

また、10月1日に港湾労働者がストを行い、1977年以来約47年ぶりに東海岸からメキシコ湾岸に至る港湾が閉鎖されたことにも注意が必要だ。今回は「未解決の問題はひとまず来年1月15日まで先送りする」ことで暫定合意が成立、ストは3日間で終了した。

だが、使用者団体と労働者団体の間で、6年で60%強という、大幅な賃金の上昇が約束されたことの意味は小さくない。港湾の閉鎖が長期化し、サプライチェーンに大きな問題が生じる懸念はなくなったものの、この先賃金上昇圧力が一段と高まる可能性は残ったことになる。

アメリカの労働者のストといえば、昨年秋に全米自動車労働組合(UAW)が大規模なストを行い、4年半で25%もの大幅賃上げを勝ち取ったことが記憶に新しい。それでもFRBはこれまで、労働市場の逼迫が賃金の上昇につながっている兆候はないとの見方を示していたし、実際に賃金の上昇がインフレを加速させるほどに深刻なものとなっていなかったのは確かだろう。

もっとも、労働者から見れば、企業の好決算が相次ぎ、S&P500種指数などの指標が史上最高値を何度も更新するという状況下で、自分たちの給料が思ったほどに上がらないという事態に対して、不満がかなり高まっている可能性が高い。

自動車労働者や港湾労働者のストを見て、今後、他の業界の労働者も賃上げ要求を加速させることは十分に考えられるし、それがこの先賃金上昇圧力を改めて強めることがあっても、何ら不思議ではないとみておいたほうがよい。

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