アメリカのインフレは再び深刻化する懸念がある 当局も市場も楽観的で、今後は警戒が必要だ

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また企業のコスト意識の高さも、この先無視することはできなくなってくるかもしれない。確かに、1日に発表された9月ISM製造業景況指数のうち、価格指数は48.3と8月の54.0から大幅に低下しただけでなく、2023年12月以来、50の節目を割り込んだ。

だが、9月に発表されたフィラデルフィア連銀やNY連銀の製造業景況感指数でも、価格指数は高水準を維持している。特に6カ月後の見通しは前月の8月から大きく上昇した。つまり、企業がこの先の支払いコストが上昇するとみているということは、FRBが重視しているインフレ期待の上昇につながる可能性が高く、こちらもインフレ再燃の兆候とみることができるだろう。

インフレが今後再燃する可能性は決して低くない

一方で足元の物価指標は、落ち着いた状況が続いている。消費者物価指数は今年4月以降、前年比での伸びが前月を下回る状態が続いている。またFRBが重視するとされる個人消費支出(PCE)は、8月には前年比で2.2%増、食品とエネルギーを除くコア指数で2.7%増にまで低下している。

だが、10日に発表された9月の消費者物価指数は、総合指数が前月比で0.2%増と、食品とエネルギーを除いたコア指数が同0.3増%と、ともに予想を上回る伸びとなった。また前年比でみても総合指数が2.4%増と、引き続き8月を下回る伸びにとどまったが、コア指数では3.3%増と、前月よりも伸びが拡大した。

確かに、これらは「インフレ圧力が改めて強まった」というほどの内容ではなかった。だが、前述した賃金上昇圧力の高止まりや、企業のコスト意識の高さが、この先インフレの再燃につながってくる可能性は決して低くない。

インフレ率が、FRBが目標とする2%を達成したわけではない今の段階で、こうした兆候が出てきたことの意味は小さくないはずだ。いまFRBが一番恐れているのは、利下げに転じたことによってインフレ圧力が改めて強まり、結局は再利上げに踏み切らざるをえなくなるシナリオだ。FRBの信認低下につながるだけではなく、アメリカの経済にも混乱をもたらすことが必至だからだ。

足元のデータを見る限り、9月の0.5%利下げは行きすぎだった可能性が高く、今後は利下げのペースを急速に緩めることになりそうだ。11月と12月のFOMCで0.25ポイントずつ、あるいはどちらかの会合で利下げを見送ることも十分にありうると、みておいたほうがよいのではないか。

(当記事は「会社四季報オンライン」にも掲載しています)

松本 英毅 NY在住コモディティトレーダー

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まつもと えいき / Eiki Matsumoto

1963年生まれ。音楽家活動のあとアメリカでコモディティートレードの専門家として活動。2004年にコメンテーターとしての活動を開始。現在、「よそうかい.com」代表取締役としてプロ投資家を対象に情報発信中。NYを拠点にアメリカ市場を幅広くウォッチ、原油を中心としたコモディティー市場全般に対する造詣が深い。毎日NY市場が開く前に配信されるデイリーストラテジーレポートでは、推奨トレードのシミュレーションが好結果を残しており、2018年にはそれを基にした商品ファンドを立ち上げ、自らも運用に当たる。ツイッター (@yosoukai) のほか、YouTubeチャンネルでも毎日精力的に情報を配信している。

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