1年で優勝、巨人・阿部監督の「若手を律する」凄み その手腕を、マネジメントの観点から考える

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井上や秋広への接し方以外に、試合後の取材で選手を名指しして「求めること」を厳しい口調で話す場面も目立った。例えば4月2日の中日ドラゴンズ戦、シーズン初のサヨナラ負けを喫した試合で、11回に送りバントを失敗した大城卓三に対して「野球の神様が怒った」とピシャリ。

その他にも、8月6日の広島東洋カープ戦、見逃し三振をした泉口友汰に対して「積極的にいくのが大事なときがあるから。あれならオレでもできるから、打席に行って振らないなら」と報道陣に語っているなど、選手へ厳しいコメントをすることもあった。

「厳しさ」に必要なのは、コミュニケーションと納得感

阿部監督のように、若手の成長のためには厳しく接することも必要だ、と感じるマネジメント層の読者も多いはず。しかし、昨今は一歩間違えればハラスメントと訴えられることも多く、尻込みしてしまう人もまた多いのではないか。

組織に詳しい経営コンサルタントの横山信弘氏は、若手を引き締めるマネジメントのコツとして、次のように話す。

「定期的に、組織としてのルールやマナー、考え方を徹底的にかつ明確に伝えておくことが重要だ。

例えば業務との向き合い方について『ミスしないようにしよう』とあいまいに伝えるのではなく、『ミスは2回までならしょうがないが、3回目はいけない』と明確に伝える。そうすれば、自分自身でもルールを破ってしまったと感じるし、マネジャーからある程度叱責されても、納得感を持って受け入れられるだろう。

また、ルールや考え方は単なる思い付きではなく、客観的に納得できるものである必要があるし、人によって対応の差をつけるのはもってのほか。どんなに成績が良くても、ルールを破ったら“締める”と伝える。

時には嫌われ役となってでも、それを徹底して組織を律するのが、マネジャーの仕事だ」

横山氏はこうした組織を律するマネジメントの事例として、ある中堅企業部長のエピソードを挙げる。この部長が率いるチームでは、3回以上の遅刻で評価を下げるとメンバーに伝えていたという。

そんな中、ある課長が営業会議を3回連続で遅刻したことがあったという。課長は「電話対応があったので……」と言い訳をしたものの、社長が出席するような会議には決して遅刻しないことを部長は知っていた。

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