「日本一老いる村」の村長が訴える地方創生の現実 群馬県南牧村「コミュニティ崩壊が始まっている」

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――人口減少が急速に進む村の課題をどのようにとらえていますか。

大きく挙げると、地域のコミュニティ崩壊、将来を担う子どもが非常に少ないことが一番の課題だ。

村の行政区は15あり、もう少し小さい単位の分区が55ある。分区は少し前まで60あったが、住民が亡くなったり、子どものところに移ったりして、誰もいなくなった区もある。行政の役割を担うなり手がいなくて、コミュニティ崩壊が始まっている。お祭り1つにしても、今までだったらできていたことができなくなった。

群馬県南牧村役場に設置された、現在の村の人口を知らせる看板
群馬県南牧村役場に設置された、現在の村の人口を知らせるパネル(記者撮影)

私の頃は小中学生が2000人以上いたが、(今春に小中学校が統合する形でオープンした)義務教育学校は9年生まで全部合わせて20人しかいない。

村に3つある介護施設も、労働力として外国人を入れることに真剣に取り組んでいかないといけなくなる。役場の採用に関しても、私が役場職員であるときからを含めて採用に関わったこの15年くらいで、正式な新卒採用はいまだにゼロだ。

15年後の“安定”を目指している

――そうした中で、人口減少を食い止めることは可能なのでしょうか。

急に増やすとか、V字回復とか、この現状をすぐに挽回する手はどう考えてもない。この村がいちばん栄えた頃の状態に戻すのは無理だが、15年後くらいに(人口が)安定していける計画を立てて努力している。

群馬県南牧村の様子
過疎が進む村内の様子。日中でも人影はまばらだ(記者撮影)

村としてやっていける人口は現在の半分程度の700~800人だ。これから年間だいたい60人くらいが亡くなり、人口ピラミッドの上部で1番ボリュームがある高齢者が間違いなくいなくなる。10年だと600人だ。

一方、年間の出生数はゼロだった時期もあったが、今は少し回復して2~3人が生まれる。2.5世帯が年間平均で入ってきたら、15年後の人口は700~800になる。そのための(移住定住促進)政策を今やっていて、現状では計画以上に達成しているが、これを絶対続けないといけない。

もともと出生の単位が少なすぎるから、われわれがやっていることは「化ける」可能性がある。外から移住する人はほとんど単身だったが、村で結婚して子育てするのが夢だという女性が2人いて、ともに外で男性を見つけて結婚し、村で子どもができている。微々たる数だけど、少し明かりが見えてきた。

あとはどうやって生活し、食っていくかだ。村で新しい住宅を作って、賃貸料が月2万4000円。村の支援も含めて安く生活できて、生活で困らないというのは大きい。(移住は)仕事とセットじゃないといけない。

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