「日本一老いる村」の村長が訴える地方創生の現実 群馬県南牧村「コミュニティ崩壊が始まっている」

著者フォロー
ブックマーク

記事をマイページに保存
できます。
無料会員登録はこちら
はこちら

印刷ページの表示はログインが必要です。

無料会員登録はこちら

はこちら

縮小

――地方創生をコンサルに丸投げする自治体も多いという指摘が上がってきました。

ふざけていると思ったのは、いちばん最初に地方創生の将来計画を立てるわけだが、そのときに全国の多くの自治体がコンサルに頼んでいた。

うちもそうしないとやっていられないと言う職員がいたが、自分の自治体がこれからどう動くかを人任せにするのは許されるのかと思った。村を知らない東京のコンサルが出した計画でなく、ここに住む自分たちが将来のことを考えてやろうと言った。

画一的なメニューでは絶対失敗する

――前の岸田政権では「デジタル田園都市国家構想」がキーワードでした。情報通信技術を使って、都市と地方の格差をなくすという発想ですが、村のデジタル利活用はいかがですか。

まず引っかかるのは、「デジタル田園都市国家構想」という名前だ。南牧村は、田園でも都市でもないし、そんなもののメニューがこっちに合うわけがない。(群馬県の大都市である)前橋市や高崎市を目指しても意味がまったくないと思うが、みんな同じ所を目指せ、みたいなメニューが多すぎる。

ここは70%がお年寄りで、メールすら送れない人たちがいっぱいいる。例えば、過去にパソコン教室のようなものをやったときは、最初は100人も来たけど、1カ月経ったら2人しか残らなかった。

国も県もDXを進めているが、そもそも使おうとしない人が多い地域では、お金をかけてもたかだか1~2割程度しか使わない。その人たちにお金を使うくらいなら、他の8~9割の年寄りのためにシェアハウスでも建てることにお金を使いたいという話になる。

こういう町村でデジタル化を進めても難しいし、5年、10年先をみてデジタル化していくのは無理がある。そこを何としても目指せと言ったって、メニューが1個だったら絶対無理。「これじゃなきゃ認められない」という制約がもうマッチしていないし、絶対失敗する。

――これから他に、石破政権に期待したいことはありますか。

(役場の)職員は過去の半分になり、行政サービスが低下して、いざ災害が起きると困る。全国どこでも派遣するのは難しいとは思うが、自治体が要望したら国から職員を派遣してほしい。

市町村を信用できないなら、お金だけではなく、人を出してくれるシステムがほしい。直接頼もうとすると「すべて県を通してください」となるので、もう少し人的交流や話を気楽にできる体制がほしい。

茶山 瞭 東洋経済 記者

著者をフォローすると、最新記事をメールでお知らせします。右上のボタンからフォローください。

ちゃやま りょう / Ryo Chayama

1990年生まれ、大阪府高槻市出身。京都大学文学部を卒業後、読売新聞の記者として岐阜支局や東京経済部に在籍。司法や調査報道のほか、民間企業や中央官庁を担当した。2024年1月に東洋経済に入社し、通信業界とITベンダー業界を中心に取材。メディア、都市といったテーマにも関心がある。趣味は、読書、散歩、旅行。学生時代は、理論社会学や哲学・思想を学んだ。

この著者の記事一覧はこちら
ブックマーク

記事をマイページに保存
できます。
無料会員登録はこちら
はこちら

印刷ページの表示はログインが必要です。

無料会員登録はこちら

はこちら

関連記事
トピックボードAD
政治・経済の人気記事