「日本一老いる村」の村長が訴える地方創生の現実 群馬県南牧村「コミュニティ崩壊が始まっている」
――消滅可能性自治体や地方創生の話が出てきたのは2014年、ちょうど長谷川さんが村長になった頃でした。
(2014年の)5月1日に着任したが、ゴールデンウィーク明けに、「消滅可能性自治体」の話が出てきた。全国町村長大会の勉強会場に行ったら、「おお来たぞ、来たぞ」とみんながこっちを指差している。当時の新聞に、南牧村が「消滅可能性都市1番」と出ていた。
予想とそんなに狂っていないから、びっくりはしなかった。ただ、「どうせ消滅しちゃうんだ」と、これから努力しようというときに諦めムードに拍車をかけてしまうようで残念だった。
――これまでの国の「地方創生」政策を振り返っていかがでしょうか。自治体が主体的に行う取り組みを国が後押しする、といった趣旨で進められてきたと思います。
地方創生の良かったところは、今まで過疎の村は努力していないからそうなった、という一般的な見方に対し、地方は地方で大変で、お金をある程度分配しないといけない、とお金がつくシステムが1つできたことだ。
例えば地域おこし協力隊の制度や、ふるさと納税みたいなシステムも出てきて、大変な地方が努力をすれば若干かもしれないけれど創生できるチャンスが出てきたのはよかった。それまで、「過疎対策」みたいなかたちで片づけられていたから。
国は交付金の制度設計の見直しを
――その後、地方創生の戦略を策定した自治体に交付金を出す制度が設けられ、今回誕生した石破新政権は予算規模を倍増する方針も示しています。
実際のところ、地方創生の交付金は使いづらい。全部が全部ではないけど、地方に任すと言いながら、任せて失敗したり、無駄にお金が使われたりしないように、国がコントロールしている。「これに当てはまるならいいけど、これから外れたらダメ」という縛りがハナから交付金にある。
要は、交付金(の使い道として)はハード事業がダメで、ソフト事業だと。だけど、村単位ではソフト事業は厳しく、基本的には村が必要とするのはハードがほとんどだ。地方創生だと、移住者が住むところがないといけないので、アパート形式のものを整備したり、交流したりするようなものを建てる必要がある。
(ソフトでいうと)この村は非常に観光が弱いが、これから立ち上げようにも、ノウハウがない。結局コンサルに頼まないと何もできないが、人頼みだとうまくいかないかもしれない。いきなりこの村を観光で生きる村に変えるわけにはいかないし、ソフトに金を使う意味があるのかと思う。
今まで箱物ばかり作るから箱物に頼らないように(ハードを作るな)と国が言うのはわかるが、ソフトで村は変えられない。交付金を倍増すると言われているが、もう少し手綱を緩めて、市町村に使い方を任せてもらいたい。最初から門前払いせず、こちらが提案すればメニューを作ってほしい。
無料会員登録はこちら
ログインはこちら