「50代独身、団地暮らし」に猛烈に惹かれるワケ 「団地のふたり」が織りなす"なんかいい暮らし"

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あるとき喧嘩したふたりが仲直りするきっかけは切ないものであった。

幼い頃、仲良くしていたもうひとりの団地のお友達・空ちゃん。幼くして亡くなった彼女の命日に毎年、花を供えにふたりは部屋を訪ねることにしていた。

その日、花をもって野枝が奈津子を誘いにきて、そのまま亡くなった空ちゃんの家へ。そこには40年前の子ども部屋がそのまま残っている。いまは残された母親がひとり、娘の思い出とともに暮らしている。

40年も前に亡くなった人物のことをいまなおずっと思い出しながら、つい最近のことのように語りあえるのは、団地があの頃のままでいるからだ。

あるとき、ノエチとなっちゃんが食事をともにした際の話題は、いまの日本人女性の平均寿命。87歳まであと30年以上あるという現実。社会人になって山あり谷あり生きてきたぶんくらいの、途方もない時間があることをふたりは認識する。

あと30年以上――もう1回、人生を生き直すようなものであり、それは希望なのか、地獄なのか。国力が弱っているにもかかわらず寿命だけは伸びている現代日本をゆるやかに、でも鋭く写し取っている。きっといまの日本には「はぐれ者」が増えているのではないだろうか。

団地のふたり
ベランダをテラスのように使う様子に、視聴者の団地暮らしへの憧れが募る(画像:NHK『団地のふたり』公式サイトより)

キョンキョンが見事に中年女性になっている

ファンタジーとほんの少しだけの苦み。その塩梅にふさわしいのが小泉今日子と小林聡美である。ふたりはほどよく生活感がない。だがふたりとも決してチャラッともしていなくて、地に足はついて見える。

小林聡美は、映画『かもめ食堂』(2006年)のヒット以来、北欧的な丁寧な暮らしのロールモデルを演じる第一人者である。たたずまいがふわりとしていて生活感がなく、でもなさすぎもせず、親しみがある。世帯じみてないけれど生活力はありそうだ。

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