中国の「和式トイレ」日本と"座る位置が違う"ナゼ お尻が開いたズボンを穿く子、謎のトイレ事情

著者フォロー
ブックマーク

記事をマイページに保存
できます。
無料会員登録はこちら
はこちら

印刷ページの表示はログインが必要です。

無料会員登録はこちら

はこちら

縮小

トイレと排泄をめぐる疑問はまだまだある。和式トイレの配置も、謎だった。

日本の和式トイレは個室のドアを横に見る方向に便器が配置されているのが普通だ。一方、中国の和式トイレは、しゃがんで用を足しているときに個室のドアが目の前に来る配置が多い。

浦上早苗 中国 トイレ
Ⓒモドロカ

個室に入って回れ右して便器をまたぐので、効率が悪い。なぜかトイレットペーパーホルダーと洗浄ボタンは奥の壁にあったりするので、しゃがんだまま体をひねって紙を引っ張らなければいけなかった。

謎の和式トイレの配置に対する仮説

「中国の和式トイレってなんで利用者の道線を考えていないんですかね」と、私より中国在住歴が長い日本人男性に言うと、彼は「それは……敵に後ろをとらせないためじゃないかな」と答えた。

トイレに長らくドアや仕切りがなかったのは、最も無防備になる瞬間に敵の来襲に備えるためで、ドアのあるトイレでも何らかの理由でドアが開いたときにすぐ対応できるように便器が配置されているのではないか。人に見られて平然としているのも、警戒心が羞恥心を上回るからではないかというのが中国生活十数年の彼が導き出した「仮説」だった。

たしかに、中国人にとってトイレが無防備になってしまう、できるだけ早く立ち去りたい場所であるなら、清潔感がないのも、鍵をかけないのもつじつまがあう。

『崖っぷち母子、仕事と子育てに詰んで中国へ飛ぶ』(‎大和書房)書影をクリックするとアマゾンのサイトにジャンプします

日本人はどちらかと言うとトイレを「くつろぎ」「おもてなしの場所」と考えており、リビングや寝室と同じように飾るし、公共トイレでもスマホを見ながらだらだらと過ごしたりする。

もはやトイレというより多目的スペースだ。誰もが絶対に使う場所だからこそ、国民の歴史や気質が反映されているのかもしれない。日本のトイレは、平和と安全の象徴でもあるのだ。

ガラケー全盛期、グーグルマップなど誰も知らない時代。中国に住む日本人女子が集まると、「きれいなトイレがわかる地図が欲しいよね」という話になった。

中国に住んでいてつらいのは、公共トイレのカオスぶり。オブラートに包まず言えば、とにかく汚い。ドアを開けるときに、相当な覚悟をしなければならない。私は中国基準でいえば比較的キレイな留学生専用校舎のトイレさえ、ほとんど使わなかった。

観光地には有料トイレがあることも多いが、手を洗うときに中年の女性が私に代わって蛇口をひねったり手を拭くティッシュを手渡したりしてくれたり、とにかく期待とは違うところに投資がされていて、「そんなところに人件費かけなくていいから、トイレをもっときれいにして、ついでにトイレットペーパーをセットしてくれ!」と叫びそうになったこともある。

浦上 早苗 経済ジャーナリスト

著者をフォローすると、最新記事をメールでお知らせします。右上のボタンからフォローください。

うらがみ さなえ / Sanae Uragami

早稲田大学政治経済学部卒。西日本新聞社を経て、中国・大連に国費博士留学および少数民族向けの大学で講師。2016年夏以降東京で、執筆、翻訳、教育など。中国メディアとの関わりが多いので、複数媒体で経済ニュースを翻訳、執筆。法政大学MBA兼任講師(コミュニケーション・マネジメント)。新書に『新型コロナVS中国14億人』(小学館新書)。
X: https://twitter.com/sanadi37
Facebook: https://www.facebook.com/sanae.uragami
公式サイト: https://uragami-sanae.jimdosite.com/
 

この著者の記事一覧はこちら
ブックマーク

記事をマイページに保存
できます。
無料会員登録はこちら
はこちら

印刷ページの表示はログインが必要です。

無料会員登録はこちら

はこちら

関連記事
トピックボードAD
政治・経済の人気記事