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ライフ #獣医病理医からみた「動物の話」

ペットを「おくりびと」に託した飼い主の深い愛情 「コスメティック剖検」が必要とされている理由

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  • 中村 進一 獣医師、獣医病理学専門家
  • 大谷 智通 サイエンスライター、書籍編集者
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獣医病理医としては、できるだけ多くの遺体を解剖し、病気や死因の情報を集めたいという気持ちがあります。しかし、飼い主さんにとって、ペットは家族同然の存在。死因を知るためとはいえ、多くの人は解剖することに抵抗感を持ちます。

病理解剖の依頼が減少傾向にあるなか、獣医療の発展のために解剖の機会をくださる飼い主さんには最大限の感謝をし、遺体には敬意を払いながら、損傷を最小限に抑えた剖検をしなくてはいけない――ぼくはそのための「コスメティック剖検」の手技を磨いてきました。

ラットの飼い主さんは、昨年末に出版したぼくの著書『死んだ動物の体の中で起こっていたこと』(ブックマン社)を読み、「コスメティック剖検」について知ったそうです。

そして、見た目が変わらずに遺体が戻ってくるのであれば、体調不良の原因を知り、その知識を今後またラットを飼うときに生かしたいと考え、問い合わせをしてくれたのでした。

送る前に一晩考えてもらう理由

ラットはさまざまな学問分野で利用されている重要な実験動物です。病気についての知見はそれなりにあるのですが、それはあくまでも実験動物としてのもので、ペットとしてのラットの病気や死因はあまり研究されていません。

「そのときがくるまで悩まれると思います。亡くなってしまったら一晩よくお考えになってくださいね。それでも病理解剖のお気持ちに変わりがないようでしたら、ご連絡ください」

病理解剖によって死因が明らかになれば、飼い主さんは死を納得でき、悲しみもいくらかやわらぐかもしれません。ぼくとしても、1つひとつの症例の積み重ねが病気の理解につながるため、解剖の依頼はありがたいものです。

しかし、たとえコスメティック剖検であっても、解剖の際には遺体に必ずメスが入りますので、後々、飼い主さんが「かわいそうなことをした」という負い目を心に抱え続ける可能性もあります。

そのため、個人から病理解剖の依頼があったとき、ぼくは飼い主さんに遺体と一晩過ごしてもらい、気持ちを整理したうえで改めて病理解剖を行うかどうかの決断していただくようにしています。

ほどなくして、ラットは亡くなり、ぼくのところに遺体が届きました。「この子を病理解剖に出すことで、いつかラットの肺炎などを治せるようになるとよいなと考えています」とのことでした。

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