リクルート「エリクラ」利用者に"不法投棄誘発"か 会社側に見解を問うと「サービスのあり方改善」へ

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掃いても、掃いても落ち葉が舞い込んでくるマンションの敷地内。ほうきやちりとりは、掃除のプロのシンジさんはすでに持っているが、ほかの利用者は自費でそろえなければならない(写真:シンジさん提供)

シンジさんは「やるべきことが決まっている仕事は性に合っている」と話す一方で、「清掃の仕事の(社会的な)地位が低いと感じます」と打ち明ける。

清掃会社に勤めていたとき、実際の職場は取引先の会社だったが、一部の社員からはいつまでも名前で呼ばれることはなく、あいさつをしても無視されたり、廊下の隅に置いた掃除用具を「邪魔だよ」と足蹴にされたりしたこともあった。シンジさんは「個人の経験ではありますが、差別的な態度を取るのは決まって中高年の男性でした」という。

シンジさんは「ウエットティッシュなんかでマンションの掃除なんてできませんよ」と専用の雑巾と洗剤を見せる。エリクラが持参道具としてウエットティッシュを認めている時点で「清掃の仕事をバカにしている」とも(写真:シンジさん提供)

シンジさんは、低い報酬のわりに多くの要求をされる現状や、不法投棄を招きかねない仕組みを放置するのは「根底に清掃の仕事を軽んじる気持ちがあるからではないか」という思いが拭えないようだった。

シンジさんに言わせると、同じ業務委託でもエリクラと、それ以外の現場ではかなり勝手が違う。

「エリクラの提示時間は最短で終わる場合を想定しているようですが、普通は取引先とのトラブルを避けるためにも作業時間は多めに見積もるものです。作業量だって状況によって違うのに時間や報酬を交渉できないのはおかしいと思います」

いずれも一理ある。しかし、それほど不満があるなら、エリクラを利用しなければいいのではないか。私の問いかけに、シンジさんは「やらなくて済むならやりたくないですよ」と返した。

「あなた方はこの条件でやるんですか?」

シンジさんの年収は200万円ほど。このうち4分の1はエリクラからの収入だという。両親と同居しているのでなんとか暮らせているが、肩身は狭い。また、業界大手の「おそうじ本舗」や「くらしのマーケット」の参入により、清掃の仕事の報酬相場は下降傾向にあるといい、「スキマバイトで収入を補うしかない」と話す。

「取引先からおそうじ本舗と比較して値引きを求められることもあります。いずれ『エリクラではいくらでやってくれる』と言われる日が来るのではないでしょうか」

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エリクラ以外にも清掃系の業務委託契約を仲介するスキマバイトはほかにもあり、今後も“細切れ雇用”ならぬ、“細切れ業務委託”は増えるだろう。昨年から始まったインボイス制度も、シンジさんの減収に追い打ちをかけた。シンジさんは「来年の今ごろ、この仕事をできているかわかりません」とうつむく。

シンジさんの指摘がきっかけとなり、リクルートはサービスのあり方を改めるという。まずは現場の訴えを正面から受け止めてくれたのではないか。しかし、シンジさんの表情は硬いまま。そして放たれた問いかけは辛辣だった。

「エリクラの人に聞きたいです。あなた方はこの仕事を、この条件でやるんですか?」

本連載「ボクらは『貧困強制社会』を生きている」では生活苦でお悩みの男性の方からの情報・相談をお待ちしております(詳細は個別に取材させていただきます)。こちらのフォームにご記入ください。
藤田 和恵 ジャーナリスト

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ふじた かずえ / Kazue Fujita

1970年、東京生まれ。北海道新聞社会部記者を経て2006年よりフリーに。事件、労働、福祉問題を中心に取材活動を行う。著書に『民営化という名の労働破壊』(大月書店)、『ルポ 労働格差とポピュリズム 大阪で起きていること』(岩波ブックレット)ほか。

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