みんなが「得を感じられる」政策こそが必要だ!--行動経済学からみた年金問題の解決法
したがって、猛反対をしそうな人、声の大きな人、投票する確率の高い層が現状よりも不利になり、投票しない可能性が高く、関心が低い人が改善する改革案となってしまい、利害が対立するときに政権与党が通そうとする政策のセオリーの正反対の状況になってしまう。だから、実行が難しい。
逆に言えば、これまでは政治セオリーどおり運営していたために、相対的に若い都市部の人々に負担がしわ寄せされるだけになってしまって、もはやこれ以上、この戦術が通用しなくなるまで、負担を負わされた人々の不満が高まってしまった、ということだ。
政治的には、うまくやってきたと思われていたのは、人々が増税には猛反対するくせに、年金保険料の引き上げは仕方ないと、何も抵抗せずに受け入れてきたことだ。いまや年金保険料は、ほとんどのサラリーマンにとって、所得税の倍程度になっている。そのツケもいま噴出している。
いち早く噴出したのは、雇用主負担分が半分あるから、企業側が、年金負担しないように正社員を減らし、海外に雇用を移してきた。これは日本経済、社会にとって、最も重要な雇用を、たかだか年金制度の辻褄を合わせるために、安易に上げられる負担の領域に頼りすぎて、壊してしまったのである。だから、最悪の政策だったのだ。
負担の実感について、さらに言えば、損(給付削減)は明日から実感され、得(払い込みの長期にわたる上昇スピードの減速、遠い将来もらえる年金額の下落のある程度の防止)はもともと目に見えない。だから、この改革が実現するのは難しい。
結果的に、現時点(12月中旬)では、政府案はまとまったが、「消費税部分は分離して後で決定、給付の減額は、特例で増えている部分、物価が下がった分ですでに減額すべきだった2.5%を、特例を外して既存のルール通り下げる」というものだけだ。しかも、それを3年もかけて引き下げるという。