「地震と豪雨」能登半島ダブルパンチの深刻さ 現地調査した専門家が検証「今後警戒すべき点」

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グラウンドには地震の際、すでに大きな地割れができていた。そこから豪雨の影響で土砂が流れていき、途中の土などを巻き込んで流れ下っていったものと考えられる。

山側から流れて来た土砂に埋まった車・住宅
山側から流れて来た土砂に埋まった車・住宅(9月25日、輪島市内で筆者撮影)

9月上旬にも大雨で土砂が流出し浸水被害があった、と報道されていたが、21日の豪雨によってより広範囲に被害をもたらす結果となったようだ。「地震による山側にできた亀裂が、豪雨災害での被害拡大につながった事例」とみられる。

家屋流出の地域では

番号⑤は家屋の流出があり、死者・行方不明者を生じている地域である。被害があった付近は、塚田川という川の流域の谷であった。

塚田川は源流付近から被災地域までわずか3㎞しかない小さな川だが、3㎞ほどの間に200m近い急峻な高低差がある山林を下ってくる。

特に上流域では複数の崩壊地がみられ[「地理院地図」令和6年(2024年)能登半島地震 > 斜面崩壊・堆積分布データによる]、急激な水位上昇や濁流からは、土砂ダムや土石流による「土砂・洪水氾濫」の発生も想定される。

しかも、流失した家屋の付近は非常に谷幅が狭く、下の断面図通り、北側には標高が高い場所があった。そのため川の流れがより南側に集中し、狭い谷を濁流となって押し寄せたことが想定される。

この場所は「地すべりの警戒区域」に指定されていたが、洪水ハザードマップの浸水想定区域や、土石流などの警戒区域には指定されていなかった(【次の記事】能登・仮設住宅浸水、ハザードマップの「想定外」に続きます)。

【写真】地震・水害で相次いで被害を受けた街の様子など(8枚)
塚田川流域・抽出家屋付近の断面図
塚田川流域・流出家屋付近の断面図 (画像:地理院地図の断面図機能に加筆し、筆者作成)
横山 芳春 だいち災害リスク研究所 所長・地盤災害ドクター

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よこやま よしはる / Yoshiharu Yokoyama

地形と地質、地盤災害の専門家。早稲田大学大学院理工学研究科博士課程を修了、関東平野(茨城県南部全域の常陸台地)の地形・地質のなりたちに関する博士論文で博士(理学)の学位を取得。早稲田大学理工学総合研究センター勤務ののち、国立研究開発法人 産業技術総合研究所 地質情報研究部門(旧・通産省工業技術院 地質調査所)などで研究に従事。現在は、さくら事務所が運営するシンクタンクだいち災害リスク研究所所長として、災害が起きた際には速やかに現地入りして被害を調査。地盤災害のプロフェッショナルとして活動している。

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