成果を出す人の「ノイズを遮断する」技術 GEはこうやって最強のリーダーを育成する

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GEを20年率いたジャック・ウェルチ氏は、引退の記者会見で「どのようにして20世紀最高の経営者と呼ばれるようになったのか」という質問に対して、たった一言「セルフ・アウェアネス」と答えました。人の上に立つ者として、「自分を知る」ということ以上に重要なことはないのです。

ウェルチ氏の後を継いでCEOとして現在のGEを率いているのがジェフ・イメルト氏です。彼はリーダーシップとは「終わりのない自分探しの旅」であると言っています。まさに自分を知ることの大切さを強調した言葉です。実際、彼はそのために毎週土曜日の午前中を、その週の自分の言動を振り返るための時間に充てています。

またアマゾンのCEOであるジェフ・ベゾス氏が、四半期末になると、ビジョンや戦略を考えるため、数日間ひとりきりになることもよく知られています。あふれかえる洪水のような情報の波に飲み込まれず、自分の立ち位置を確かめながら、未来を構築するためにも、こうした時間は、企業トップのみならず、すべてのビジネス・パーソンに必要です。

「1カ月間出社禁止」制度の狙い

企業としてもユニークな施策をとっているところがあります。ある電子部品メーカーの話です。この会社では、「部門長に昇格したら、1カ月間出社禁止」という制度があります。制度の効果を説明する前に、この制度の対象になった人たちに見られた1カ月の典型的な行動パターンを以下に紹介します。

第1週は、働きずくめでなかなか実現できなかった、家族との長期旅行に行く。第2週は、ゴルフや釣りなど、自分の趣味に没頭する。まさにゴルフざんまい、釣りざんまい。そして、第3週になると、本人は「不安」に駆られるとのことです。それまでの社会人人生で、2週間連続で休みを取って会社に行かなかった経験がないからです。

部門長として陣頭指揮を執るべき自分が、2週間も会社を留守にしていては、さぞかし現場は混乱しているだろう……と心配にもなります。しかし制度の決まりで、会社に足を踏み入れてはいけません。すると部門長たちは、会社の近くにある喫茶店に行って陣取り、次々と部下の課長たちを呼び出すというのです。

「どうだ、何か問題は起こっていないか」と部門長は尋ねます。しかし、部下たちから返ってくる答えは、「何も問題ありません」という言葉ばかり。部門長たちは、この、「何も問題はない」という部下たちの言葉に対して、一様にショックを受けるということです。自分がいなくても、部門の仕事は問題なく動いているという事実を突きつけられた彼らはどうするか。「部門長として自分はいったい何をすべきなのか」という深い問いと向き合い、しばらく内省の時間を過ごすことになるのです――。

つまり、この「1カ月間出社禁止」制度の副次的な効果は、「自分の内面と向き合う時間を持つ」ということだったのです。

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