"56のサッカーチーム巡る"自閉症の子と父の挑戦 ドイツでヒット『ぼくとパパ、約束の週末』

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本作主人公のジェイソンにもやはり彼独自のルーティンとルールがあり、それらが守られないとパニックを起こしてしまう。また他者に触れられることも極端に嫌がる。

その状態のことをジェイソンは「頭の中の戦争」と表現していたが、自分のルールから外れた、予想外のことに直面すると、頭の中にたくさんの考えが浮かんではそれが衝突し合い、強い負荷がかかり、パニック状態に陥るのだという。

それゆえ学校でも、自分のこだわりやルールから外れたことに対しては、思ったことをすぐに口に出してしまい、学校の先生であろうと、友だちであろうと構わず傷つけてしまう。そんなトラブル続きのジェイソンに対して、学校側からは特殊学級への編入を勧められるも、ジェイソンはそれを頑なに拒否するのだった。

そんなジェイソンに対して偏見や、無理解の目が向けられるたびに、ママのファティメは矢面に立って、彼を守るために神経をすり減らす日々だったが、出張続きだったパパのミルコは「お金を稼ぐのは自分、家庭を守るのは妻」といった考えのもと、ジェイソンの世話をママに任せっきりだった。

サッカーの「推しチーム」を見つけたい

そんなある日のこと。クラスメイトから好きなサッカーチームを聞かれたのに答えることができなかったジェイソンは、自分もサッカーチームを応援してみたいと思い立つ。

そして肝心の“お気に入りのチーム”については、実際に自分でスタジアムに足を運び、自分の目で数々のチェックポイントを確かめたうえで、どこにするのか見極めたいというのだ。

それも他人からの受け売りで決めるのではなく、テレビ観戦だけで決めることもしない。「サッカーのスタジアムに連れていく代わりに、もう友だちや先生を傷つけない?」というパパの問いかけに、「いいよ」とジェイソン。そこに息子の変化を感じ取ったパパは、多忙な仕事のスケジュールを調整して、毎週末に行われるサッカーの試合に連れていくことを約束する。

ぼくとパパ、約束の週末
ジェイソンとパパは、週末ごとに電車に乗っては、各地のサッカースタジアムを遠征してまわる©2023 WIEDEMANN & BERG FILM GMBH / SEVENPICTURES FILM GMBH

やると決めたらとことんまで、というのがジェイソン流。彼の“推し候補”となるのは1部リーグだけでなく、2部リーグ、3部リーグなどの下部組織も含めた56チーム全部。軽い気持ちで約束したものの、その数字を聞いてややひるんでしまったミルコだったが、とはいえもう後には引けない。

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