東京駅から12分、都民も知らない「謎の街」の実態 上野の隣なのに知名度ほぼゼロの駅「尾久」の魅力

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駅前で長く飲食店を営んでいる女性に聞くと、「尾久の前か後ろに別の言葉がつくと、途端に”おぐ”に変わるんですよ」とのこと。つまり前に西が付く「西尾久」は「にしおぐ」だ。後ろに「銀座商店街」が付けば「おぐぎんざ商店街」となる。

乗降客が極端に少ないJR尾久駅

駅に関して、もう一つだけ解説を加えたい。周辺の主要駅と比べると、尾久駅は乗降客が極端に少ないのだ。

不動産ライブラリ
乗降者数が極端に少ないことでも知られている尾久駅。周辺の主要駅と比べると、その少なさがよくわかる(国土交通省「不動産情報ライブラリ」より筆者作成)

このように比較すると、尾久駅の乗降客数の少なさがわかる。「閑散駅」と表現されることもあるらしい。駅の背後には広大な車両基地(尾久車両センター)が広がっており、街としてのにぎわいはないのだが、正面の北口を出ると、すぐに明治通りが走っており、ファミレスなどもあるが、乗降客が少ないことが示す通り、比較的静かな雰囲気だ。

ただ、住む側として決して悪いことではない。親の代から同エリアに暮らす40代の男性が次のように語ってくれた。

「尾久駅前は静かだけど、東尾久のほうに行くと商店街もたくさんあるし、賑やかですよ。この地区は、商店街が強いから大きなショッピングモールみたいなものはないんだよ。そのぶん古くからやっている個人店が多いから、最近はそれを目当てにしたお客さんも多い。あと、尾久は他に比べて家賃が安いから、若い家族も増えているんですよ。そういう意味では活気のある街ですね」

調べてみると確かに周辺地域に比べて家賃相場は安い。JR尾久駅を起点にした近隣駅の、ひとり暮らし用マンションの家賃相場(1R~1DK)は以下の通りだ。

ひとり暮らしなら、23区内でも10万円未満で十分に住むことができる(各種不動産サイトと現地調査より筆者作成)

尾久駅付近の家賃は近隣の他の駅に比べて2万円〜4万円ほど低めだ。これも「住むとちょっといい街」の魅力のひとつといえる。

しかし、なぜ安いのか。前出の地元民は次のように語る。

「うーん、確かなことはわからないけど、ここらは海抜が低いからね。隅田川、荒川が氾濫したら水没しかねない。そういうことも家賃の安さに結びついているのかもしれないね」

気になったので調べてみた。

国土地理院発行の地図
海抜が低いことは、尾久エリアのネックではある(国土地理院発行の地図〈3D表示〉より筆者作成)

地域の北側すぐには隅田川が、その向こうには荒川が流れている。画面左側の北区から、JRの線路を越えて荒川区に入ると、隅田川に向かってかなり低くなっているのがわかる。

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