AWS、KDDIで薫陶受けた「ベンチャー社長」の素顔 3月上場ソラコムがたどった異色の成長の軌跡

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内実ともにAWSと切り離せない形で創業したわずか3年後、ソラコムは、日本の大手通信キャリアであるKDDIの傘下入りという道を選ぶ。運用期限内のエグジットを目指すファンドなどよりも、株主の意向に左右されにくい安定的な経営基盤を手にするため、ソラコムから株譲渡を持ちかけた。

KDDIという大企業グループに入ったことは、顧客との関係構築で大きなメリットを生んだ。玉川氏は「(それにより)永続的に安定してインフラを提供できる会社と認識いただいた」と振り返る。

KDDI傘下入り時点に描いた計画を大きく上回る水準で成長したソラコムは、「上場」という次のステージを見据えるようになる。世界展開に向けて「もう1回しっかりアクセルを踏んだら、もっと成長できるのではないか」と考えた玉川氏は、KDDIの髙橋誠社長に相談し、2020年からIPOに向けた準備を始めた。

KDDI傘下で学んだこと

上場に向けて、ソラコムが生み出した言葉が「スイングバイIPO」だった。

スイングバイは宇宙の用語で、宇宙探査機が惑星の重力を利用して加速すること。親会社のKDDIを惑星、傘下のソラコムを宇宙船にたとえ、スタートアップが大企業の力を借りてさらなる飛躍のために上場する、との意味がある。

ソラコム社内に展示されている上場通知書
東京・赤坂にあるソラコム本社には、3月に果たしたIPO関連の記念品が飾られている。左側の記念品はKDDIから贈られた(撮影:尾形文繁)

いったん大企業の傘下に入った後に離れるような形で上場することは、ともすればネガティブな目で見られる。しかし、「KDDIと仲違いするように出ていくと見られたくない。さらなるマイルストーンを作るためのIPOだ」(玉川氏)として、ポジティブなメッセージ出しにこだわった。

上場後のKDDIの出資比率は4割程度に下がり、持ち分法適用会社になったが、現在も主要取引先としても良好な関係が続く。KDDIグループに入ったことは、結果的に上場準備の面でも役立った。玉川氏は「コンプライアンス、ガバナンス、そして事業計画をどう作り、レビューしていくかという点で、学びもすごくあった。ソラコムという組織が次のステージに向けて訓練されてレベルが上がったので、上場時に実は楽だった」と振り返る。

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