インテル「独り負け」招いたCEO肝煎り事業の混沌 時価総額はAMDの半分以下、直近業績は赤字転落

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工場建設をはじめ大規模な投資が必須のファウンドリー事業だが、この点ではコロナ禍以降の世界的なサプライチェーンの混乱や、各国が地政学リスクを重視し始める追い風が吹いた。

インテルは事業立ち上げのためアメリカのアリゾナ州などで工場を建設。半導体サプライチェーンの国内回帰を促すアメリカのCHIPS法によって、最大85億ドルもの助成を受けることも決まっている。

だが当然、顧客あっての受託製造である。そもそも、製造を委託する可能性がある半導体メーカーはインテルのライバルでもある。アマゾンやマイクロソフトといった直接の競合とはならない大手データセンター事業者からの受託は表明した一方で、ドイツとポーランドで建設を進めていた2工場の稼働は、需要が想定に届かずに2年間延期することを発表した。

2024年1〜6月期のファウンドリー事業の売上高87億ドルのうち、外部顧客への売上高はわずか1億ドルに過ぎなかった。

信用格付けの格下げ続く

こうした状況で、ファウンドリー事業を分社化しなければならない理由があった。資金調達の問題だ。

「インテルの既存事業だけでは、この先借り入れの返済をすべてキャッシュフローだけでまかなうのは厳しい。一方で、今の信用格付けのままでは借り換えすらままならなくなる」。こう指摘するのは、独立系金融アドバイザー(IFA)5バリューアセットで債券アナリストを務める上田祐介氏だ。

株価以上に、インテルの信用格付けは現在の状況を象徴している。1993年から30年間にわたって安定してA格を保っていたS&Pによる格付けは、2023年から断続的に格下げが続き、8月にはトリプルB格に格下げされている。その下のダブルB格となれば、インテル債は「投機的」と見なされ、負債性の資金調達はままならなくなる。

赤字を垂れ流すファウンドリー事業を別法人にしたところで、連結子会社である以上は株主にとっての価値に変わりはない。一方で、社債の発行や借り入れによる調達の場合はあくまで別法人と見なされるようになる。配当の停止や人員リストラにまで踏み込み現金の確保に走るインテル「本体」にとって、ファウンドリー事業の分離は不可避だった。

アメリカの半導体大手クアルコムがインテルの買収を検討する観測報道が浮上するなど、かつての業界盟主が置かれている状況は非常に厳しい。技術力と業績ともに、かつての輝きを取り戻せるのか。インテルの苦悩はしばらく続きそうだ。

石阪 友貴 東洋経済 記者

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いしざか ともき / Tomoki Ishizaka

早稲田大学政治経済学部卒。2017年に東洋経済新報社入社。食品・飲料業界を担当しジャパニーズウイスキー、加熱式たばこなどを取材。2019年から製薬業界をカバーし「コロナ医療」「製薬大リストラ」「医療テックベンチャー」などの特集を担当。現在は半導体業界を取材中。バイクとボートレース 、深夜ラジオが好き。

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