過去10年間を振り返ると、コネクテッド/自動運転/シェアリングなどの新サービス・電動化(CASE)や、モビリティ・アズ・ア・サービス(MaaS)といった、欧州発の新しい考え方が日本自動車産業界にも急激に広まった。
これを、一般的には「100年に一度の自動車産業変革」と呼んできた。
だが、EVシフトの浮き沈みで実証されたように、実際には欧米中の政治的な思惑とそれにまつわる投資が大きく影響している。日本自動車産業界は、それに翻弄されているような印象が強い。
また、社会変化に応じた「製販分離」を抜本的に見直すような具体的な動きも事実上、生まれていない。
そうした中、日本政府は自動車産業界と連携して「モビリティDX(デジタル・トランスフォーメーション)」という表現を使い、2030〜2035年に向けた日本の自動車/モビリティ産業の勝ち筋を模索している。
足元では、2024年10月15〜18日に幕張メッセで開催される「Japan Mobility Show Bizweek 2024」で、自動車産業界とベンチャー企業との化学反応を支援する舞台を準備している。
2020年代後半を「失われた5年間」にしないために
EVシフトは、単なる“クルマの電動化”ではなく、地域社会におけるユニバーサル・エネルギーである“電気を活用する社会変革”だと、筆者は認識している。
いま、EVシフトはたしかに踊り場であるが、ここから中・長期的な伸びが始まるという流れではない。社会変革をともなう急激な変化が、世界のどこかを起点に一気に始まるのではないだろうか。
2030〜2035年の勝ち筋という、自動車産業界と日本政府による市場の先読みは、結果的に童話「うさぎと亀」の「うさぎ」になりかねない。
2030年代に入って過去を振り返ったとき、2020年代半ばから後半を「失われた5年間」と称さないためにも、自動車産業界はモビリティ産業界に向けた思い切った意識改革が必要だ。
なお、自工会は10月2日、「令和7年度税制改正・予算要望の概要、及び自動車税制抜本見直しの改革案」を発表した。
この中で、車体課税については、所得時の課税は消費税に1本化。現在の環境性能割は、廃止を要望。保有時では、重量をベースに課税標準を統一。環境性能に応じた増減の仕組みでCO2削減を目指すとした。
EVの場合、航続距離を長くするには搭載する電池容量を増やす必要があり、車重が上がる。そのため、保有時での税金も上がる方向だが、その中でCO2削減への貢献度をどう描くのか。
また、今回の改革案に向けて、バリューチェーン全体としてのモビリティ産業への変革についても強調している。現在の「生産~新車売り切り型」という事業体系をメーカーとして考え直す準備が、税制の抜本見直しをトリガーとして加速しそうだ。
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