「あの居酒屋の売上は?」で"人材の質"見抜ける訳 「フェルミ推定は無意味」に対する数学的な反論

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しかし、「最初から完璧な回答を目指さない」という感覚がない人は、上記の例において「そのほか」もちゃんと正確に計算しなければと考え、いつまでも思考の対象として残してしまうのです。

ノンアルコールの飲み物やおつまみの売上を一生懸命考えたところで、最終的な成果に大きな影響はないでしょう。最悪の場合、そこでおかしな計算をすることで全体の売上規模を間違えてしまう可能性もあります。ならばそのようなものは大胆に捨ててしまえばいいのです。

「選択と集中」の能力を見抜く

私の指導現場での経験則になりますが、時間をかけて細かい数字まで追いかける人ほど、最終的な結果で大きく桁を外したりするケースがあります。そういう意味で、フェルミ推定の問題を短時間でうまく処理する人は次の2つの特徴があるといえます。

①「メイン」と「そのほか」に分類する

②「そのほか」を躊躇なく捨てて考える

この2つを満たす人物は、本当にビジネスで成果を出す人材なのでしょうか。絶対と言い切れるわけではありませんし、例外はあるかもしれません。しかしそれでも私は自信を持って「概ねYES」と答えます。

物事をなんでも「メイン」と「そのほか」に分類できるということは、いつどんな時でも大切なものとそうでないもの、主従関係の主と従など、2つに分類する考え方が染み付いていることを意味します。

たとえば成果を出す経営者はまさにこれができる人ではないでしょうか。重要なこととそうでないことに分け、そうでないものは容赦なく捨てる。選択と集中。難しいことですが、間違いなくそれができる人物のはずです。

成果を出す人は、フェルミ推定が上手だから成果が出るのではなく、「メイン」と「そのほか」に分類し、「そのほか」を躊躇なく捨てることができる人だから結果的に成果が出せていると理解できます。

そのため、フェルミ推定の問題にどうアプローチするかを観察すれば、(ビジネスパーソンの思考力という観点で)その人物のすべてがわかります。フェルミ推定が教えてくれることは、実はとても奥深いものなのです。

「けっきょく頭のよさが業績に直結している」

大きな声では言えないけれど本音ではそう思っている人は、ぜひ今からでもトレーニングをしてみてはいかがでしょうか。

そしてもしあなたが企業の経営者や人事担当者、あるいは部門のマネジメント職などをされているなら、ぜひあなたの会社においても採用面接に活用してはいかがでしょうか。模範回答を準備すればどうにかなる選考方法より、はるかに精度の高い採用面接になることをお約束いたします。

深沢 真太郎 BMコンサルティング代表取締役、ビジネス数学教育家

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ふかさわ しんたろう / Shintaro Fukasawa

一般社団法人日本ビジネス数学協会代表理事。ビジネス数学を提唱する人材教育のプロフェショナル。公益財団法人日本数学検定協会主催「ビジネス数学検定」1級(AAA)は日本最上位。これまでに指導した人数は、延べ7000人。「ビジネス数学」の第一人者として確固たる地位を築く。企業研修のほか学生やプロスポーツ選手などの教育研修にも登壇。数学的な人材の育成に力を入れている。著書に『「仕事」に使える数学』(ダイヤモンド社)、『数学女子智香が教える 仕事で数字を使うって、こういうことです。』(日本実業出版社)など。2018年には小説家としてデビュー作『論理ガール』(実務教育出版)を上梓。

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